天皇は「象徴」であり、政治の実権を持たず、選挙で投票することもできない。この「象徴」という表現には、いったいどんな意味が込められているのか?
政治の学び直しに役立つと話題の『今さら聞けない!政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(馬屋原吉博著、すばる舎)から、著者で中学受験の社会科の大人気講師・馬屋原吉博先生のわかりやすい解説を紹介する。

天皇の地位を規定する憲法第1条

【政治の学び直し】「天皇が象徴である」というのは、どういう意味なのか?写真はイメージです(Photo: Adobe Stock)

日本国憲法は、天皇について規定した第1条でも、主権が国民にあることを明言しています。

日本国憲法第1条
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

「象徴」とは、一般的に絵や写真で表すことができない考えや物事を、具体的に表現した記号のことです。たとえば「ハート」という記号を見ると、多くの人は「愛」や「恋」を連想します。これが象徴です。

しかし、あくまで記号ですから、ハートマーク自体をどんなに分析しても、その中に「愛」そのものを見つけることはできません。

1条は同時に国民主権を明言

「天皇は日本国の象徴である」というとき、それは、天皇は政治に対していかなる実質的な力も持たない、と規定しているのとほぼ同義です。

そのため、天皇や皇族には、国民に認められている「選挙権」や「被選挙権」すら認められていません。天皇や皇族の重要な仕事である「国事行為」は、すべて「内閣の助言と承認に基く」、すなわち、その内容は内閣が決めると規定されています。

そのうえで、日本国憲法は、天皇は象徴であると規定した、その同じ第1条の中で、この国の政治において主権を持つのは「日本国民」であると明言しているわけです。