短時間で成果を出している人がいる一方、頑張っているのに成果が出ない人もいる。この違いは何だろう? 経営の最前線で20年以上、成果上げられる人と上げられない人の差を研究してきた人物がいる。東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の木下勝寿社長だ。注目の最新刊『チームX(エックス)』は「世界的にみても極上レベルのビジネス書」(神田昌典氏)と評され、デビュー作『売上最小化、利益最大化の法則』は「20年に一冊の本」(人気会計士)と絶賛された。そして今、「やる気に頼らず楽しく続けられる」と話題となっているのがベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。本稿では【がっちりマンデー!!】SNSで「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表から「2022年に読んだオススメ本3選」に選抜された本書から一部を抜粋しながら、「最短時間で最大の成果を出す方法」を紹介する。

間近に会って実感した、リクルート創業者と私との決定的な差

江副浩正氏と私との
決定的な差とは?

 私がリクルートの新入社員として大阪・難波営業所に勤務していたとき、突然、創業者の江副浩正氏(1936~2013)がやってきた。

 すでに社長を退任されていたが、社員たちにとっては神様のような存在だった。

 第一印象は「けっこう小柄な方だな」だった。

 おそらく身長は160センチ前後であったかと思う。

 白髪の多い小さなおじさんであった。

 だが、その直後、江副さんは少し得意げに

 「実は僕ね、このビルには前にもきたことがあるんです」

 と言った。

 私は驚いた。

 当時の難波営業所はリクルートの自社ビルだった。

 この小さなおじさんは、その自分のビルに「きたことがある」と自慢するほど数多くのビルを所有しているのだ。

 そして私は、彼が持つ数えきれないほどのビルの中の一室で黙々と働いている一介の社員という立場なのだ。

 動物の社会の大半では体の大きなモノが群れを支配するが、人間の社会では体の大きさはスポーツ選手でもない限り一切関係ない。

 肉体的には明らかに私のほうが江副さんより体が大きく、若いので優位であり、江副さんも私も一日24時間しかないのは変わらない。

 つまり「物理的」に私が江副さんより劣っているものは何一つないのである。

 しかし、現実としてこの小柄なおじさんはこの大企業のトップ(元トップ)であり、私はその会社の末端社員である。

 成功している人とそうでない人の差に「物理的」な要因はまったく関係ない、という当たり前のことに改めて気づいた。

「誰に」「何を」伝えているか

 では、私と江副さんの差はどこから生まれたのか?

 突き詰めて考えると、

 「この世の中で『誰に』『何を』伝えているか

 ということ以外の違いが見つからなかった。

 相互コミュニケーションによって成り立つ人間社会において、結局は「誰かに何かを伝えること」によってすべてが決まっていく。

 コミュニケーションとして適切な人に適切な内容を伝えた人は成功していくし、不適切な人に不適切な内容を伝えたり、適切な人に適切な内容を伝えられなかったとしたら成功しない。

 そこを考え、判断し、行動していくのが、この人間社会で成功していく方法なのだと悟った。

 江副さんはそこをうまくやってきたからこそ成功したのだろうし、私はまだそれをやっていないから成功していないのだろう。

 逆にいうと、それさえやれば誰でも成功できるんじゃないかと思った。

 私はそれ以来、

人が成功するかどうかに物理的要因は一切関係ない
どんな人でも『誰に』『何を』伝えるかを適切にやれば成功できる

 という考えでやってきた。

 成功している人を見て、「あの人は○○だからうまくいっただけだよ」と妬んでいる人を横目に、江副さんを見て悟ったことを愚直にやってきた。

(本稿は『時間最短化、成果最大化の法則』の一部を抜粋・編集したものです)