蔵の主要銘柄は二つ。一つが県産米を用い、珍しい酸基醴酛(さんきあまざけもと)で仕込んだ「廣喜(ひろき)」。酸基醴酛とは、蒸し米を高温糖化で甘酒にし、蔵から選抜した乳酸菌を添加して酒母を育てる酒造り。温旨酸(おんしさん)も冷旨酸(れいしさん)も多く、冷酒でも燗酒でも豊かなうま味を味わえる。もう一つが、21年に立ち上げた「紫宙」で、県内外の酒米を、県の酵母「ジョバンニの調べ」を使って速醸酛で醸す無濾過原酒だ。みずみずしくクリアな味が注目の的。副社長の佐藤一章さんは「海外でも通用する酒なので、輸出を伸ばしたい」と未来を描く。冬は氷点下のいてつく寒さが天然の冷却装置になり、水分神社の恵みの水と蔵一丸の情熱で、唯一無二の紫波の酒を目指す。

新日本酒紀行「紫宙」紫宙 純米吟醸 ハートラベル
●紫波酒造店・岩手県紫波郡紫波町宮手字泉屋敷2-4●代表銘柄:紫宙、廣喜●杜氏:小野裕美●主要な米の品種:ぎんおとめ、吟ぎんが、結の香、銀河のしずく、五百万石、美山錦、秋田酒こまち、山田錦
新日本酒紀行「紫宙」スギに囲まれた水分神社 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「紫宙」スギに囲まれた水分神社 Photo by Y.Y.
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