読書習慣が強力な武器になる

 読書習慣がさまざまな面で知的発達を促進することは明らかだが、それは最新の脳科学の研究によっても裏づけられている。

 脳科学的手法で子どもたちの知的発達の研究を進めている川島隆太と横田晋たちは、5歳から18歳の子どもや若者を対象に、「あなたは、漫画や絵本を除く読書の習慣はついているほうだと思いますか」と尋ね、その回答を数値化し、同時にMRIで脳の状態を測定しておき、それから三年後の脳の形態の変化を調べるという大がかりな研究を行っている。その結果、読書習慣の強さは、神経繊維の発達や言語性知能の向上と大きく関係していることが確認されたのだ。

『勉強ができる子は何が違うのか』書影『勉強ができる子は何が違うのか』(筑摩書房) 榎本博明 著

 読書習慣のある子は、言語能力に関係する神経をよく使うため、神経の連絡が密になり、言語能力に関係する領域の神経走行に変化が生じたと考えられる。それが言語性知能の向上につながっていた。読書が知的発達を促進するということは、心理学や教育学の多くの研究データで示されているが、脳画像によっても証明されたのである。

 川島たちによれば、このような変化は大人になってからも生じるため、何歳になっても読書習慣によって脳の発達を促すことができることになる。

 こうした脳画像のデータからも、読書が語彙力・読解力や想像力の鍛錬になるということからも、読書が学力を高めるための強力な武器になることは明らかである。これまで本を読む習慣がなかった場合は、これを機に少しずつでも読書習慣を身につけていくようにしたい。