変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。

「若くして老け込んでしまう人」のたった一つの特徴Photo: Adobe Stock

役割が減っている時代

 デジタル革命以前は、多くのものがタテ割りで設計されていました。食品業界や建設業界、医療業界や金融業界といった業界も例外ではなく、また、それに対応する形で取引先も部門が分かれていました。弁護士や会計士、税理士などの士業に関しても、その専門性に合わせたタテ割りが当たり前でした。

 しかし、デジタル革命後は、このようなタテ割りからヨコ割りへと世界が変化しています。たとえば、海外ではスーパーアプリが日常的に使われ、一つのアプリでライドシェアから金融サービス、フードデリバリーから遠隔医療まで幅広いサービスが利用できます。このような時代に何が起きるかというと、タテ割りの業界や組織がなくなり、それらに従事していた人たちの役割が激減します。

 また、人を介して伝達されていた事項もEメールのCC機能やSlackなどで代替されれば、付加価値を出していない中間管理職は不要になります。

役割ではなく、仕事の意義を考える

 このような時代に〇〇部長、〇〇課長などの役割にすがっていると、若くして老け込むことになってしまいます。なぜならば、デジタル革命後の世界においては、必要とされる役割が構造的に減っていくからです。

 では、どうすればいいのかというと、役割ではなく、仕事の意義を考えるようにしましょう。

 何のために会社が存在しているのか、その中で皆さんの仕事の意義が何なのかを考えれば、ある日突然役割がなくなっても喪失感にさいなまれることはないでしょう。

足し算思考ではなく、引き算思考

 仕事の意義を考えるために必要なことは、足し算思考ではなく、引き算思考です。今あるものを守ってさらに付加するのではなく、目的から考えて不要なものを削除するようにしましょう

 顧客にとって今やっている仕事は必要なのか、それをやめて新たな価値を出すことはできないのか、と考えるようにしましょう。そのようにすれば、老け込まずに新たな価値を生み出し続けることができるでしょう。

「アジャイル仕事術」では、引き算思考の具体的な方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。