クラフトビールが、
多種多様なのはなぜ?
もちろん、つくり手ばかりが増えたところで、産業は定着しない。クラフトビールが従来のビール党とは別に、着々と新たなファンを増やしている点も見逃せないだろう。その理由のひとつは、スタイルの多様さにある。
大まかに括れば、ビールは「ラガービール」と「エールビール」の2種類に分けられる。これは醸造に用いられる酵母の違いだ。専門的になるのでここでは細かい解説を割愛するが、長らく日本国民に浸透してきたのはラガービールに属する「ピルスナー」というスタイルである。
ピルスナーはご存知のように、冷やしておいしく、喉越しでぐいぐい味わえる淡麗なスタイルだ。高温多湿なアジア圏でピルスナーが好まれてきたのは自然なことだろう。
もう一方のエールビールのほうがスタイルは多彩で、クラフトビール人気を下支えしているのも、その多様性がウケているからだと考えられる。たとえば色味ひとつを取っても、白や茶色、黒、赤など実に多彩。味もフルーティーなものからビターなものまで、その時々の気分に合わせてセレクトできる楽しさがある。
ちなみに、筆者は東京・代官山でクラフトビールに特化したビアバーを営んでいるが、「ビールは苦手」という人の多くは、ピルスナーに苦手意識を持っているに過ぎないことを日々実感している。試しにエールビールの中からいくつかお勧めしてみると、たいてい「これなら飲める」、「こんなにおいしいビールは初めて」と喜ばれるから、クラフトビールが人気なのも頷けるというものだ。