好みのワインを最速で見つけるために、まず覚えたい「6種」とは?いつも、なんとなく選んでいるワイン。今年こそは…… (写真はイメージです) Photo:PIXTA

年末年始に向けてワインの席が増えるころだから、多少の知識はたくわえておきたい。11月解禁の「ボジョレヌーボー」の歴史からフランスの2大ワイン「ボルドー」と「ブルゴーニュ」の違い、そして好みのワインを見つける手掛かりまで、東京・西荻窪に30年続くワインバーの店主が指南する。(取材・文/フリーライター&エディター 増澤曜子)

早飲み競争抑制のために
制定された解禁日

 11月の第3木曜日は、ボジョレヌーボー解禁日である。フランス・ボジョレ地区のぶどうから作ったその年の新酒が、この日から飲める。ヌーボーは新しいという意味。

 日本だと、さしずめ「獺祭新酒解禁」とか「今日から真澄新酒飲めます」といったところだ。
 
 もっとも、ヌーボーは、その年のぶどうの出来ばえを試すために、発酵などの工程を短縮して作る試飲用で3カ月ほどしかもたない。バナナのような柔らかい香りのするフレッシュなワインである。

「初かつを」に「初松茸」と初ものを好む日本人がいるように、かつてのフランスにもヌーボー一番乗りを目指す人がたくさんいたらしい。とにかく、「ブドウが穫れたら早く飲ませろ」ということで、ボジョレヌーボーの初売りがどんどん早くなり、もはやジュースでは? というような代物まで出回るようになった。

 そこで1985年、フランス政府が、11月の第3木曜日まではボジョレヌーボーを売ってはならぬと決めたのだそうだ。

 ここに商機を見出したのが、醸造家ジョルジュ・デュブフ。彼は、解禁日を特別な日としてキャンペーンを開始。さらにボジョレヌーボーを春までしか飲めない限定アイテムとして高級レストランに売り込むことに成功したのだ。

 そして、時差の関係で、世界で一番早くボジョレヌーボーを飲むことができる日本はお得意様となる。1990年前後のバブル時代には、解禁日はお祭り騒ぎで、ボジョレヌーボーのボトルが1本1万円もしていたという話もある。

 東京・西荻窪のワインバー「El Bon Vino(エル・ボン・ビーノ)」の店主でソムリエの堀信義さんは、当時のワイン事情をこう思い出す。

「あの頃は、まだワインが今ほど一般的でなかったですね。レストランでもスーパーでもワインをそれほど置いていませんでした。私も、93年にこの店を始めたときには、日本酒や紹興酒もメニューにのせていましたから」