「1stRoundでやっていることは、大学の基礎技術が(ビジネスとして)どんな課題解決に使えるかを発見した上で事業化するためのサポートです。大事にしているのは、自分たちだけで囲い込まないこと。プログラム終了後に(東大IPCのファンドから)採択企業へ出資することはありますが、採択時には株式を取得せず、第三者に近い立場から関係企業につなげられるからこそ、一緒にやりたいと思ってもらえる。この取り組みは東大IPCが東大子会社という公共性を持つ機関だからこそ実現できるものだと考えています」(長坂氏)

過去6年半で累計68チームを採択しており、採択チームの90%以上が1年以内に資金調達を実施した。実際にほとんどのケースでは他大学の関連VCを含めた投資家が資金を提供しており、東大IPCのファンドが出資したのは10%ほどにとどまる。

大手企業とのコラボレーションも進んでいて、68社中31社で協業が実現。第7回目となる前回のプログラムでは8社全てが期間中に大手企業との協業に至った。

大学としては基礎技術を活用したイノベーションの創出が求められる一方で、スタートアップの支援体制が十分ではなかったり、研究開発型スタートアップの成功事例が少なかったりする場合も多い。1stRoundへの参画はその成功例を増やすきっかけになりうる。

また長坂氏によると1stRoundでは応募チームの同意を得られた場合、各チームの関連する大学の支援担当者へプレゼン資料や事業概要を共有する取り組みも実施している。こうすることで自分たちの大学にルーツを持つディープテック企業を見落とすことなく、支援の幅を広げられる効果も期待できるという。

4月10日よりエントリーを開始する9回目からは、共催大学の幅が13大学まで広がった。東大IPCでは自社で運用してきた人材支援の取り組みなどを応用し、ユニークな基礎技術を有するチームを人材採用や組織づくりの面からもサポートする方針だ。

基礎技術を「事業価値が算定可能なスタートアップ」へと変える

近年は大学や研究機関の基礎技術を用いて社会課題の解決を目指すディープテック企業に対する注目度が世界的にも高まっている。

背景にあるのは気候変動や人口減少を始めとした社会課題だ。「地球に持続的に人類が生きていけなくなるような時代が近づいてきているから」(長坂氏)こそ、EVやフードテック、宇宙、AIといった領域で挑戦する企業に関心が集まる。

また、こうしたディープテック企業を後押しするための環境が整い始めていることも影響していると長坂氏は話す。