ゲームであることの利点はいくつかある。1つ目は、戦闘シーンで(簡単操作でも)自分で操作して敵を倒しているため、「自分が強い」という自信や、強敵との戦闘で瀕死になる緊張感も含めて感情移入がしやすいこと。2つ目は、フィールド移動時に自由にカメラ視点を変えて全方向の景色を眺められるため、世界を堪能できること。そのほかにも、地面の揺れや衝撃をコントローラーの振動で感じたり、重い扉を開ける際にはR2トリガーを押す「抵抗」が重くなることで、プレーヤーが「作品内に介在している実感」もある。

このほか、FF16は映像のほとんどを3DCGでリアルタイムに描画しているため、実写カメラには撮影できないようなアングルや演出、被写界深度まで自由自在だ。映像クオリティも4K解像度+HDRカラー。サウンド面もPS5の3Dサウンドに対応しているため、自宅にPS5と4Kディスプレイがあれば、IMAXレーザーを備えた映画館並のオーディオ&ビジュアルを自宅で堪能できる。

また劇場で観る映画とは異なり、自分の好きなタイミングで中断・再開もできるため、毎日帰宅後に1~2時間ずつプレーするといった楽しみ方もできるのは、地味に嬉しい。なにしろFF16の想定プレイ時間(35時間)は、1作が約3時間の『ロード・オブ・ザ・リング』なら11作ぶん。1作が約1時間の『ゲーム・オブ・スローンズ』に換算すれば35話、4シーズンぶんのボリュームがあるのだから。

シリアスで哀しく、重い「大人のFF」ストーリー

本作における魔法使いは「ベアラー」と呼ばれ、奴隷のような扱いを受けている。そして、魔法を使うごとに身体が石化していくという設定がある。召喚獣は、過去のFFシリーズでは「魔力を用いて呼び出す強力な魔法」という設定だったが、FF16では「体内に宿す強力な魔物(魔力)」という扱い。召喚獣を宿した人間は「ドミナント」と呼ばれ、ある国では王家の血筋としてあがめられるが、一方では国家間の争いで使う兵器と認識され、奴隷のような扱いをしている国もある。

主人公のクライヴはドミナントの血筋である王族の長男に生まれたが、召喚獣を宿したのは病弱な弟。ある事件をきっかけに弟はクライヴを守るために召喚獣へと変身するが、別の召喚獣に倒される現場を目の当たりにする。冒頭まもなく訪れるそのシーンから、彼の復讐劇が始まるというのが本作のストーリーだ。

本作のレーティングは、FFシリーズとしては初のCEROレーティング「D(17歳以上を対象とする表現内容が含まれている)」。北米のレーティングである「ESRB」も同じく17歳以上向けの「M」。さらにEUのレーティング「PEGI」では18歳以上向けとなっている。過去作と比較して厳しいレーティングの理由は、過酷な奴隷の扱いやベット上での男女の会話シーン、さらには同性愛表現などで、重厚なストーリーを描いているからだ。前述のゲーム・オブ・スローンズに見られるような直接的なセクシャル表現こそは避けつつも、これまで日本のゲームが触れてこなかった、人間心理の暗部にも踏み込んだ作品になっているのだ。