2号ファンドと異なり、ビルダーファンドは1号ファンドと同様にDeNA単独出資で運営する。

デライト・ビルダーファンド マネージングパートナーの南場氏、坂東龍氏、川崎周平氏
左からデライト・ビルダーファンド マネージングパートナーの南場氏、坂東龍氏、川崎修平氏

ビルダーファンドの強みについて、渡辺氏は「DeNAのアセットや人材をいいとこ取りできるところ」という。

「DeNAにとっては、独立したVCとしてデライト・ベンチャーズが成功することで、新しい取引の流れや起業家を引き付け、ブランドを上げることができる。これは長期的なファイナンシャルリターンや成功を意図的に選択した結果。これを継続することを重視して、ビルダーファンドはDeNAの1社LPとしています」(渡辺氏)

デライト・ベンチャーズのベンチャー・ビルダー事業では、これから起業したい社会人を主なターゲットとしている。ファンドはファイナンシャルリターンで利益を出すビジネスモデル。だが投資判断だけでなく、起業家候補に伴走して事業のネタや顧客課題探し、そのためのフレームワークを提供するなど、アイデア作りから運営・外部VCからの調達までの一連のフローで起業家を支援する。

ベンチャー・ビルダー事業におけるスピンアウトまでの流れ
ベンチャー・ビルダー事業におけるスピンアウトまでの流れ

「起業は上流工程ほどリスクが高く、失敗要素がたくさんあります。そこをなるべく上流で一緒に見つけて、ムダな失敗をせずにスタートアップとして始動する、というところを我々の価値として提供しています」(坂東氏)

坂東氏は「大企業にはすごく優秀な方々が社会人として働いていますが、そういう人が起業しようと思い立っても、いきなり会社を辞めて起業するには、給料や生活のリスクがある。それに起業準備の時間がなかなか取れません」と社会人起業の難しさについて話す。

そこでデライト・ベンチャーズが書類選考・面接を通過した起業家候補に対して、「課題探索・企画」「開発前検証」「初期開発・検証」「運営・調達」の各フェーズで支援をしながら、予算を承認(投資判断)するかたちで事業化を進める流れだ。初期開発・検証のフェーズ以降は、デライト・ベンチャーズが起業家候補を有期雇用し、子会社として会社を作って検証を続け、うまくいったものはスピンアウトする。

「スピンアウトするときに、オーナーシップを持ってもらうことを我々は重視しています。そこで株式の82%を創業者、我々は18%の割合を持って卒業してもらうというところが特徴となっています。一般的な企業の中で事業を作ってスピンアウトしても、事業責任者が株式の大半を持つことは、日本ではほぼありません。新規事業を企業の中で作る安心感と、スタートアップとして成功したときに事業責任者にファイナンシャルリターンがあるという、2つのいいとこ取りを目指しているのがこの仕組みです」(坂東氏)