日本の経済は大企業主体のままだと渡辺氏はいう。VCへの投資も機関投資家からではなく、ほとんどが大企業からのもので、人材も大企業に集約されている。起業しても、新しいビジネスにチャレンジしにくく、失敗できない環境にある。会社法や税制面でも世界から見れば不便な点が多い。また、スタートアップが異常値的な成功を狙う前に、小さな成功で上場することが習慣的にも契約上も課せられており、上場してしまえば四半期ごとの利益の多寡に事業が左右されるようになる。さらに、逆説的だが世界第3位の経済圏を抱える日本では、海外進出しなくてもビジネスが成立してしまう状況もある。
「上流から川下まで、日本のスタートアップのエコシステムは、世界と比べて小さくなる要因が多々あります。これを1つのVCで解決することはできませんが、ある程度のインパクトは残したい。起業のハードルを下げ、我々が金銭的なリスクを取ることで、起業家がビジネスのリスクを取りやすくし、大きくチャレンジしてもらえるような投資形態や、ストックオプションの仕組みづくり、経済界に対する働きかけを行う。それにより、このエコシステムの不可逆的な変革に貢献したい。これはデライト・ベンチャーズ設立のもともとの趣旨でもあります」(渡辺氏)
渡辺氏は「1号ファンド設立から3年の間に、世の中のモメンタム(情勢)が変わった」といい、スタートアップ育成5か年計画も出た今、「いいタイミングに新ファンドを設立できた」と話している。世界的にはVCが逆風にある中で、これまでスタートアップ投資の比率が少なかった日本では、VC投資を増やそうという動きもあるという。
「世界が足踏みしている間に、日本が急速に追いつくチャンスです」(渡辺氏)