一方で企業からの情報発信をメインコンテンツとしている事例もあり、8割の企業において顧客エンゲージメントを高めたいという大枠の目的は共通するが、そのアプローチはさまざまだ。
サプリD2C事業で痛感した「顧客との距離」がきっかけに
コミューンはボストンコンサルティンググループ出身の高田氏とGoogle出身の橋本翔太氏(代表取締役COO)が2018年5月に立ち上げた。創業者の2人に取締役CTOの山本晃大氏も加えた3人の経営陣は東京大学時代の同級生。それぞれが別の企業で経験を積んだ後、コミューンに集結した。
最初はサプリのD2C事業からスタートしたが、ベータ版の時期に方向転換を決断する。次のチャレンジとしてコミュニティタッチツールを選んだのは、D2C事業時代の経験も大きく影響しているそうだ。
「ユーザー数が150〜200人ほどの規模だったにも関わらず、ユーザーの声を上手く聞くことができず苦戦したんです。中にはプロダクトを友人に勧めようとしてくれる人や、積極的にフィードバックをしてくれる人もいたのですが、そのような行動を促進する仕組みや場所を作ることができなかった。自分たち自身が顧客との距離や顧客接点に関する悩みを抱えていたんです」(高田氏)
創業者の2人が新しい事業案を練っていたある日、橋本氏が「お気に入りのスープ専門店にフィードバックする方法がない」という話を始めた。問い合わせ用の窓口に連絡をすればクレーマーと思われかもしれない。上手く伝える方法があれば、店舗にも顧客のためにもなるが、適切な場所が見つからないという。
その時に自分たち自身もかつて企業側の視点から同じような「企業と顧客の接点」に関する悩みを抱えていたことを思い出した。試しに周りの経営者にヒアリングをしてみると、どうやらこの課題は他社にも共通するものらしい。そこでcommmuneの開発に着手し、2018年9月にベータ版をローンチした。
「サブスクリプションの登場で所有から利用へと世の中のビジネスの構造が変わるとともに、SNSの普及などで個々人のメディアパワーも高まりました。そういった背景から企業と顧客の関係性が『明確な価値提供者と受益者』ではなく、『ともに価値を創る共創関係』にシフトし始めていると感じています。ただ両者の関係性は変わっているのに、コミュニケーションの方法は変わっていない。だからそこに垣根や距離が存在しているんです。今の社会に合わせて企業と顧客のコミュニケーションのあり方を再定義できれば面白いのではと考えました」(高田氏)