また投稿者側の体験向上に注力したことは中長期的にRettyに大きな成長をもたらしたが、足元で急激にユーザー数が増えていたわけではなかったために資金調達も苦戦した。特に難航したのが2012年10月に実施した2回目の調達だ。
「月間の利用者数もまだ10万〜20万人ぐらいしかいないものの、ローンチから1年が経って実績を見られるようになる。きれいに伸びていない部分をシビアに判断され『本当に大丈夫なの?』と言われることも珍しくありませんでした。想像以上に調達が長引いて、会社の口座の残金が10万円を切った時はかなりヒヤヒヤして。調達できなかった場合でも運転資金がショートしないように、どこかから借りれないか資金繰りに奔走していました」
「事業の悩みであれば、社員に共有して『みんなで頑張って成長させよう』と言えます。でも人やお金の問題は、必ずしも同じように解決できるわけでもない。精神的にも大変な時期でした」(武田氏)
満を持して閲覧者を増やすフェーズへ
Rettyにとって転機になったのが2013年だ。この年、武田氏は重大な決断をする。それまでの「投稿者だけに向き合うフェーズ」から「蓄積してきたコンテンツを活用して閲覧者を増やすフェーズ」へと移行するべく、さまざまな施策を講じたのだ。
特に上手くいったのがWebサイトのリニューアルと、蓄積されたコンテンツをまとめて紹介する“まとめコンテンツ”に舵をきったこと。これらの施策をきっかけに、検索エンジン経由で一気にユーザーが増えていった。
当時Retty上に投稿されていたクチコミ件数は60〜70万件ほど。日本全国には約70万店の飲食店が存在するので、だいたい1店舗当たり1件の投稿がついているような規模感だ。初期のRettyは東京を中心に展開していたため、都内で名の知れた店舗に関しては1店舗につきクチコミが数件寄せられていた。
そのくらいの規模になれば、クチコミを見て『このお店にいってみたい』と思ってもらえるような体験を提供できる──。2012年に苦労して調達した資金も使いつつ、武田氏は満を辞して閲覧者を増やす取り組みに投資をした。
そこからRettyは成長期に入る。2013年10月に月間利用者数(MAU)が100万人を突破したのを皮切りに、2015年5月には1000万人に到達。それ以降は年間500〜1000万人のペースで利用者を増やし、2016年5月に2000万人、2017年5月に3000万人と地盤を広げていく。