(メディアやコンテンツ制作会社の買収は)組織と事業、2つの面での理由があります。組織面では、通常の採用では獲得できない人にM&Aを通じて参画いただくのは、非常に重要だということがあります。

鈴木さん(ism創業者の鈴木碩子氏)も平野さん(BRIDGE共同創業者の平野武士氏)もそのような人材です。平野さんは業務委託(編集注:平野氏はPR TIMESによるBRIDGE買収後、業務委託で運営を担当している)でありながら、PR TIMESのメディア事業部長。M&Aという機会を通じて参画いただければ組織も強くなります。これまでにない組織を目指していきたいという考えがあります。

次に事業面です。ismの買収は特殊でした。我々が行う通常のM&Aには、当社の事業基盤を使って相手先の事業を伸ばすという考え方があります。しかし今回は逆に、私たちの事業を、ismの事業資産を使って伸ばして欲しいというM&Aでした。

我々はPR TIMESというプラットフォーマーでありながら、パートナーとしてお客様の情報発信のサポートにも取り組んでいます。ですが、その事業はあまり伸びていませんでした。

ismが加わることで、ここを伸ばす余地が出てくる。メディア事業は十分に伸ばせていない状況なので協力してほしい。そう考え、M&Aに至りました。

──プレスリリース配信サービスであるPR TIMESがメディアを運営することに疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。

PRのプラットフォームを持ちながらメディアも持つということには、さまざまな意見があると思います。批判もあると思います。私たちがメディアをやらなくて良いのであれば、本当はそれが一番良いのではないかと思っています。

ただ、世の中の多くの人が目にするニュースというのは、PR TIMESのお客様になり得る層を含めて、彼らにとって関係のないニュースが主役となっていて、多くの人の多くの時間がそこに使われています。私たちがメディアの方々にプレスリリースを届けていくだけでは、状況は変わらないのではないでしょうか。

だからこそ、さまざまなパートナーシップが重要になってきます。資本業務提携もありますし、場合によっては私たちの資本下で、編集権を維持しながら、運営するという手段もあります。

本当に編集権が守れるかは、私たちにとっても挑戦だと思っています。今、それがうまくできているかというと、まだまだだと思っています。そして、編集権が守られると同時に「情報流通の状況が好転しているかどうか」も重要です。