香り、見た目を工夫。和菓子をアメリカにローカライズ

また、日本人が海外でブランド展開をしていく際、一般的には“アジア人の富裕層”をターゲットにするが、三木氏は違った。

「アジア人から攻めていくのはセオリーなんですが、アジア人に流行っても他の人たちに商品が広がっていくかと言われると微妙です。アジア人は昔から西洋の食文化を受け入れる土壌がありますが、白人やアルメニア人は“日本食ブーム”と言えど、なかなか受け入れてもらえません。だからこそ、ビジネス戦略として、まずは富裕層の白人やアルメニア人をターゲットにすることを決めました。そんな人たちに受け入れてもらえる商品を提供できれば、他の人たちにもどんどん広がっていくと思ったんです」(三木氏)

実際、三木氏はクラシファイドコミュニティサイト(ローカル情報を共有・交換するためのネット掲示板)「Craigslist(クレイグスリスト)」で、キャンディデイト(条件に合った候補者)として富裕層が暮らす街のルームシェアに申し込み、富裕層の生活習慣を研究した。加えてCraigslistで出会った人の食事についても研究した。その結果、富裕層の人々が実はほとんど日本料理を食べていないことがわかった。そこから「白人やアルメニア人が食べたくなる香りや見た目にシフトチェンジすることにしました」と三木氏は語る。

例えば商品のビジュアルに関しては、和菓子ということで当初は“日本らしさ”を意識したものにしていたが、日本らしさは2割以下に抑えた。実際、アメリカの人たちに聞いてみても日本要素が2割以下でも十分に日本らしさが感じられることがわかったという。

 

「多くの人がイメージする和菓子のビジュアルだと、あまりにもオーセンティック(正統的)すぎて、逆にアメリカの人たちは手が出しづらい。例えば、『チーズとピスタチオにシロップがかかってる中東の伝統的なスイーツ』と言われても、(それを見慣れていない)日本人には美味しいかどうか分からないじゃないですか。それと同じことです。アメリカに昔からあって、ラグジュアリーなイメージを与えるものはなにか。考えた結果、思いついたのが“クリスタル”でした。アメリカにはジュエリーキャンデイーというお菓子が昔からあるので、クリスタルであれば『ジュエリーキャンディーのラグジュアリー版』というイメージがしてもらいやすいと思いました」(三木氏)

また、ローズやネコヤナギ、ラベンダーなどの香りを入れている。そこにも日本と海外の違いが関係している。