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少し前まで越境ECの“定説”は、「注目すべきは人口も可処分所得も多い40歳以上、高級ブランド品や嗜好品が売れ筋」だった。しかし、そんな凝り固まった考えのままでは、今後のECビジネスは難しくなる。今のトレンドは、Z世代とミレニアルズ。彼らの思考回路はどうなっているのだろう?(ペイパル日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン)

スマホネーティブとのギャップに
新しいビジネスのヒントがある

 先日、中学生の息子と自宅にいるとき、「この料理を作って」とリール(15秒くらいの短い動画)を見せられた。料理のレシピを紹介した動画なのだが、とても短いものだったので、それだけを見て、どんなふうに作るのかよく分からない。

 結局、ひとつひとつ説明を聞きながら調理をするという新鮮な体験をした。このリールを見ている人たちには“お作法”があるらしい。あらかじめ必要なアイテムや材料を用意し、必要に応じて一時停止しながら料理を進めていくようなのだ。ちょっと不思議な感じで、とても印象に残った。

 実は、このカルチャーギャップにこそ新しいビジネスのヒントがある、と私は思っている。中学生の息子や彼の周りは、Z世代と呼ばれるスマホネーティブたち。私たちとは情報感覚や価値観が異なり、それが消費行動にも強く影響する。

 もうひとつ、これは私が最近オンラインゲームをしていたときのエピソードだ。アプリ内課金でアイテムを購入しようとしたのに、決済のポップアップが現れない。しばらく格闘したのだが、うまくいかないので、翌日会社でかなり年下の“コーチ”に教えてもらった。できなかった原因は、驚くほど簡単。アプリではなく、ブラウザを使っていたためだった。

 個人的には少し恥ずかしいエピソードだが、ものすごい勢いで変化するテクノロジーの世界のことなので、仕方がない――。そう言い聞かせ、自分を客観視するようにしている。その代わり、きちんとキャッチアップできるように社内の若い世代を勝手にコーチに任命し、積極的に頼ることにしている。

 彼・彼女らのようなスマホネーティブたちは、どういうブランドがはやっているか、どういうプロダクトが売れ筋か、アプリやブラウザなど画面内のUX(ユーザーエクスペリエンス)がどう遷移するかなどを直感的に知っている。モノを売る側は、それらを前提にした宣伝やマーケティング戦略を立てないと、せっかくのチャンスを逃してしまうことになる。