現代において、食や栄養に関する情報は複雑化しており、そこから正しいセオリーだけを見つけるのは、その道に精通しているプロでも簡単ではありません。ダイエット法や健康メソッドも流行り廃り(はやりすたり)が激しく、今日ありがたがられていたものが明日には見向きもされなくなったりします。
そこで、UK版『メンズヘルス』がエキスパートたちに取材。彼らがよく耳にするという神話や疑似科学についてうかがい、真偽のほどを確かめてみました。
1「朝食は一日で最も重要な食事である」
「シリアル会社は、この言葉を信じてもらうためのマーケティングに多額の資金を投じています。ですが実際には、トレーニング後に十分な栄養を摂っていれば、体に必要なものはそろうのです」と述べるのは、パーソナルトレーナーのヘンドリック・ファムティミさん。
朝食を軽めに済ませたいときは、日中のワークアウト後にしっかりと栄養補給をすることが効果的。「16:8」のインターミッテント・ファスティング(断続的断食)を実行中の人も同様とのこと。
研究では、BMIが高い人ほど、一日の遅い時間に食事をする傾向にあることが示されているそうです。それはつまり、朝食にこだわるのではなく、あくまで日中の明るいうちにカロリーを摂取することが違いを生むということになると推察できます。
ペンシルベニア大学のある研究では、概日リズムと同期しない食事をする人は、血糖値やコレステロール、中性脂肪の数値が芳(かんば)しくなかったそうです。
2「炭水化物を抜くことが最も賢いダイエット法である」
「炭水化物」と聞くと、パンやパスタを真っ先に思い浮かべるかもしれませんが、炭水化物は実際のところ葉物野菜からオーツ麦、レンズ豆まで、さまざまな食材に含まれています。
「英国では肥満が増加していますが、オーツ麦やレンズ豆の食べ過ぎが原因だからでしょうか? それは現代のデータに基づくものではありません」と説明するのは、栄養士のライアン・アンドリュースさん。彼は、体組成は「ストレスから睡眠まで、無数の要因に影響されます」と指摘します。
それはつまり、バターをたっぷり塗ったトーストの食べ過ぎだけが肥満の原因になるわけではないということを意味します。では、なぜこのような認識があるのでしょうか?
炭水化物を摂取すると血糖値が上昇し、脂肪の蓄積をコントロールするホルモンであるインスリンの分泌を誘発します。しかし、これは正常な生物学的プロセスであり、体の要求を満たす適切な量のエネルギーを摂取していれば、余分な脂肪がつく理由にはならないということ。
確かに、低炭水化物の食事で脂肪が減る人はいるかもしれません。ファムティミさんも「他の食べ物と同じく炭水化物をカットすると、カロリーを抑えることはできます」と説明します。しかし、それは問題の解決にはならないようです。
非常に健康的でも、炭水化物をたくさん食べる人がいることは事実で、例えば、米を主食とする日本人の肥満(WHOの基準でBMIが30以上)の割合はわずか4%程度という数字が出ています。