「いくら出せるの?」
午前4時まで続いた軟禁
午前4時過ぎから、次のような会話をした。
タクヤ君「損害賠償の形でお金を出します」
幹部 「いくら出せるの?」
タクヤ君「100(万円)だと、どうでしょうか?」
幹部 「今すぐ100(万円)を用意できるのか?」
タクヤ君「借りるしかないです」
幹部 「じゃあ、言うんじゃねえ」
タクヤ君「それでも、100(万円)を半年かけて払います。20ずつにしてもらえれば、最後に20を足します」
タクヤ君がこう言い終わった直後、幹部の1人が別室に向かった。わずか2分ほどで戻ってくると、手にA4の1枚紙を持っていた。題名には、「金銭消費貸借及び損害賠償に関する合意書(強制執行認諾約款付き)」とあった。
文書の内容は、ホストクラブの関係者と推測される人物Nが120万円をタクヤ君に貸し付け、タクヤ君は「弁済金」として、20万円ずつ6回に分けて返すというもの。タクヤ君は幹部の前で、書類に署名、母印した。Nの名前は印字されており、その横に幹部の一人である専務のAが母印した。タクヤ君は結局、Nが誰か分からないまま合意書を結ばされた。さらに、所持していたマイナンバーカードのコピーを取られた。
合意書の作成後、幹部はスマホで「謝罪動画」を撮影すると言った。タクヤ君は指示された通りの、こんなセリフを言った。
「僕はお酒を飲んで、騒ぎました。会社に対して、損害を与えて申し訳ありません。責任をもって、お金を支払います」
また、幹部はタクヤ君の電話につながるかも、その場でチェック。退店時には、「お前から損害賠償を払うと言ったんだからな。こっちからは言ってないからな」と念押しした。
27、28日の両日、幹部の1人が複数回、電話をかけてきた。消費者金融に行くことや、派遣でもいいので昼職に就き、支払いをすることを求めた。幹部は自分たちの損害賠償請求は真っ当なもので、タクヤ君が120万円を支払うのは当然との態度だ。電話が鳴る度に、タクヤ君は気落ちし、「なんでこんなことになったんだ」と自分を責めた。