大阪の街の真ん中で醸す、自然米のどぶろく
大阪の街の真ん中で、自然米でどぶろくを醸す大阪どぶろく醸造所は、スタンドうつつよを併設し、冷酒、燗酒、ソーダ割りなど楽しい飲み方を提案して、購入もできる。醸造元は日本酒餐昧(ざんまい)うつつよのオーナー料理長の藤井章弘さん。なぜ料理人が醸造の道に……。きっかけは、岩手県遠野市で自然栽培米を育て、どぶろくを醸し、民宿の料理人でもある佐々木要太郎さんとの出会いだ。「風土を感じるどぶろくの味は、何なのかを知りたくて」、何度も通って農耕や醸造を手伝った。農薬や化学肥料を排除した健全な土壌から生まれる米。その米を生かす発酵を経たどぶろくの力強さに魅了された。おいしい酒造りは土から始まる。この味や楽しさをみんなに伝えたいと、どぶろく醸造所を建てると決意。
醸造所には広い場所が必要だ。地方に移住する選択肢もあったが、「現場の空気が漂う中で、手造りの酒と肴を楽しめる酒場が大阪にあったら」と、うなぎの寝床のような30坪の店舗を借りた。2022年2月にスタンドうつつよを先行して開き、佐々木さんのどぶろくを提供。7月に「その他の醸造酒」免許を取得し、醸造をスタート。師匠はもちろん佐々木さんだ。そして23年11月に、大阪育ちのどぶろくが完成。うま味と甘味、酸味が調和し、エネルギーみなぎる元気な味は、飲む人みんなを感動させた。「今は東北の自然米を使っていますが、ゆくゆくは大阪の米で」と藤井さん。自然な農業と醸造、米の発酵で大阪をつなぎたいと願う。