この大山チャンネルを引っ張るのが、東京から大山町へ移住してきたプロデューサーの貝本正紀さん(48)だ。

 早稲田大学を卒業後、東京都内に本社を置く番組制作会社へ就職。NHKや民放各局の、数多くのドキュメンタリー番組を制作してきた。取材でたまたま大山町を訪れたことがきっかけで移住を決めた。貝本さんは話す。

「被災地などを取材していると、『あなたたちは取材はするけど、地域に役立つ情報はあんまり伝えてくれないよね』と言われた経験がありました。停電はいつ回復するのか、スーパーはいつ開くのか。そんな生活に役立つ情報が知りたいと。その地域の人に喜ばれるメディアってなんだろうと考えていた時期に、大山町と出会いました。住民が地域のために奮闘する姿を見て、テレビの力で何かできないかなと思い、2015年に移住したんです」

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 大山町はそのころ、ケーブルテレビの運用に悩んでいたという。大山町は2006年にケーブルテレビの運営を開始し、設備に約30億円を投資した。2015年までは行政職員が制作・放送を担当。行政情報や議会中継などの放送が中心で、番組の内容の充実度は欠けていたという。

いろんな仕事がある

 大山町から町営ケーブルテレビを任されることになった貝本さんは、小さな町でこそ、住民参加型のメディアができると考え、出演や制作に関わってくれる人を探したという。

「地方って、都会と異なり地域のつながりがもともと強い。みんな顔見知りだったりもします。テレビを見るきっかけとして、住民たちに出てもらったり、番組づくりに加わってもらったりするのはどうかなと思いました。普段テレビを見なくても、自分の家族や友人が出演していれば見たくなりますよね。テレビには、撮影や編集だけでなく、ナレーター、レポーター、美術、デザインなど、いろんな仕事があります。『声が綺麗だね』と言われたことがあったり、声の仕事に興味があったりして、テレビの仕事に興味がある人たちって結構いるんですよね」