ステップ2:ノーベル賞の資産運用理論
1990年代にノーベル経済学賞を受賞した何人かの経済学者たちが積み上げた研究成果として、投資理論に最終解が提示されることになりました。それはウィリアム・シャープからマイロン・ショールズまでつながる難しい話なのですが、結論だけを見ると簡単です。
それは、「アメリカのS&P500連動型の投資信託に財産を預けておくと一番安全に増やすことができるよ」という画期的な理論です。
それまでの株式投資はギャンブル性が高く、安定して上がりそうだからとゼネラルモーターズの株に投資をしたら日本車ブームが起きて株価が下がるとか、ジャック・ウェルチが世界最高の経営者だからという理由でGE株に投資したら、後継者の時代になって株価が下がるとか、とにかく大きなリスクを伴うものでした。
ノーベル経済学賞の受賞者たちが考えたのは、このリスクとは何か?という問いです。
その集大成となる答えがポートフォリオ理論といって、「市場全体に長期投資をする」という発明でした。
アメリカのS&P500とは、アメリカでもっとも有力な上場企業500社の平均株価です。この指標は面白いことに過去100年以上、一貫して右肩上がりで上昇していることが経験的にも知られていました。
100年前の1924年に8.8ポイントだったS&P500指数は、50年前の1974年には96に、30年前の1994年には473に、10年前の2014年には1822に上がり、直近では4644ポイントまで増えています。
もちろん2~3年の間には大きく下げることもあります。2007年に1424ポイントだったS&P500はリーマンショックが起きた2009年初には866ポイントに下がっています。それでも売らずにずっと持っていたら、やっぱりなぜか長期的には元の値段よりも高くなっていくのです。
この現象が起きるのには、三つの理由があります。
(1)アメリカ経済は長期的に成長し続けている
(2)そのアメリカのトップ500社の企業はアメリカ全体よりももっと成長している
(3)500社を平均すると株価の下落リスクも平均化される
この三つの前提は、なぜか不思議なことに長期的にこれまで100年以上、変わっていません。
私が社会人になってからも何度も、
「今の株価はいつかはじけるぞ」
「リーマンショックで世界の金融システムが今度こそ破壊される」
といった騒動が繰り返されてきたのですが、本当に不思議なことに数年のレベルで見るとこのリスクもすべて平均化されているのです。
今は生成AIの出現から米中対立までさまざまな新しいリスクが出現していますが、それでもアメリカ企業が資本主義経済の中で世界の資本を集めてグローバル経済の中で貪欲に成長を続ける限り、この理論をあてにしてもいいと私は思っています。
意見が同じ人は、ステップ3に進んでみましょう。
ステップ3:新NISAの破壊的活用術
それでは冒頭に紹介した投資術を、三つのシナリオでシミュレーションしてみましょう。