ここ数年、リーダーがトップダウンで意思決定を下す「ピラミッド型組織」とは異なり、意思決定の権限においてメンバー間で差をつけない「横並びの組織」への注目が高まっています。しかし、この組織形態の現実的なデメリットについては、あまり語られていません。
そこで今回は、大ベストセラーシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』の累計100万部突破を記念し、著者・安藤広大氏(株式会社識学 代表取締役社長)にご登壇いただいた特別イベント『とにかく仕組み化』サミット(ダイヤモンド社「The Salon」主催)で寄せられた「組織のあり方」にまつわる質問への、安藤氏の回答を公開します。(構成/根本隼)

「上下関係のない組織」ほど成果が出ない“ざんねんすぎる理由”Photo:Adobe Stock

「正解がわからないから」横並びの組織を導入→本末転倒

読者からの質問 私が勤めている会社は、以前までは上下関係のはっきりした「ピラミッド型組織」でした。しかし、VUCAの時代を迎え、上席にも正解がわからないので、全員横並びの「ティール型組織」に移行しました。

 お互いに全員「さん」づけで呼ぶようにルール化もしていますが、安藤さんはこの組織改革が奏功すると思いますか?

安藤広大 残念ながら、個人的には絶対うまくいかないと思いますし、そのうち失敗する可能性が高いのではないでしょうか。なぜなら、「上席が正解を持っていないから、組織を横並びにする」という発想がそもそも間違っているからです。

 本来やるべきことはまったく逆です。「誰も正解を持っていない時代」だからこそ、責任者が次々とスピーディーな意思決定をして、PDCAサイクルを高速で回すべきなんです

 これによって、実践の場数をたくさん踏みながら、アイデアや施策の質をどんどん高めていくことができます。

 一方、横並びの組織では、スピーディーな意思決定よりも「メンバー全員での会議」が重視されます。多くの場合、この会議は全員の意見が一致するか、もしくは過半数が納得するまで続くので、PDCAの「DO」にたどり着くまでにかなり時間がかかります。

 そのため、施策の結果をブラッシュアップする機会が少なく、高速でPDCAサイクルを回す他社に確実に負けることになります

 しかも、責任者がいないので、成果が出なかったときの「責任の所在」も不明確です。厳しいことを言うようですが、「正解がない時代だから」という理由で全員横並びの組織を導入するのは得策ではないですね。

(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『とにかく仕組み化』サミットで寄せられた質問への、著者・安藤広大氏の回答です)