もちろん、現代日本においても、「市場価値」の存在自体は、否定はしません。

 英語やプログラミングなどの需要の高いスキルをハイレベルで保有している人の方が、何の特技もない人よりは、圧倒的に転職はしやすいでしょう。

 また、全体的な傾向として、学歴や資格、出身企業、出身業界などの多数の要素から「高い価格の付きやすい人」と「低い価格の付きやすい人」はいると思うので、ある意味で、これは「市場価値」の差だと言えます。

 ただ、すでに説明した通り、「市場価値」が高い・低い、というのは、あくまで「全体的な傾向」というだけです。

 そして、日本においては、この「傾向」はそれほど強くなく、「自分の市場価値を高めて、転職を成功させましょう」といった、まるで転職が「市場価値」によってすべて決まるような言い方は、明らかに言い過ぎです。大部分がフィクションだと私は思います。

「市場価値」は、必ずしも転職活動の成功と失敗を分ける要素ではなく、最終的に転職活動の結果として自分に付与されるもの、と言った方が正しいと、私は思います。

 ちなみに、「資格」も転職活動には、ほとんど不要です。

 よく、「転職してキャリアアップをしたい」と資格の勉強を始める人がいますが、あまり意味はないので、本当に転職したいのであれば、資格取得ではなく、転職活動をした方が良いと思います。

 ほとんどの場合、資格だけあっても「実務経験○年」などの具体的な業務の実績がない場合、転職において、あまりプラスの評価はされません。資格は、あくまで「何もないよりはマシ」という程度で、採用の決め手には決してなりません。

 資格を武器に転職できるのは、せいぜい20代の第2新卒までだと思います。

「自分の市場価値を高めましょう」という甘々な売り文句で、高額なレッスン料を取ろうとするTOEIC対策講座や、IT系の資格学校などに騙されてはいけません。「市場価値を高めましょう」は、自分に自信を持てない多くの人を煽って、資格ビジネスやスクールビジネスに勧誘する際の、都合の良い謳い文句です。