転職の成功において、一般的に必要不可欠と言われている「自らの市場価値を高める」という行為は、実は意味がない――。転職に成功して30代前半で「外資系大手IT企業の部長」になった筆者が教える転職活動の必勝法とは?本稿は、安斎響市『私にも転職って、できますか? ~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)の一部を抜粋・編集したものです。
実態がなくてフワフワした
「市場価値信仰」
転職をどうやって成功させるか、という話になると、よく「市場価値」 というテーマが浮上します。
私は、この「市場価値」という考え方には、やや懐疑的です。「考え方」というより「思想」のような気がします。「市場価値信仰」と言っても良いです。そのくらい、「市場価値」って、実態がなくてフワフワしたものだと私は考えています。
はっきり言いましょう。転職に「市場価値」は、必ずしも必要ありません。もちろん、「市場価値」の存在を否定するわけではありません。
転職の際は、「英語ができる方が圧倒的に有利である」「近年急速に伸びている業界の経験者は重宝される」などの話は、決して嘘ではなく、そういった話が間違っているとは私も思いません。
ただ、こういうのって、 単なる「いかにもそれらしい一般論」に過ぎないのではないか、と私は思うのです。
例えば、 「身長が高い人はバスケットボールに有利だ」という仮説があったとしましょう。
これは、きっと 「間違いではない」でしょう。身長が低いよりは、高い方がバスケットボールという競技には明らかに向いています。
しかし、身長が高いからといって、身長が高い人全員がバスケットボールで能力を発揮できるわけではないでしょうし、身長が比較的低い人の中にも、バスケットボールで成功するプレイヤーが幾らでも存在するのは、NBAや日本のバスケットリーグの歴史を見れば明らかです。
「身長が高い人はバスケットボールに有利だ」は、一般論として間違いない事実だとしても別に「身長が低いとバスケットボールは無理」というわけではないし、「身長が高くてもバスケットボールが全くできない人は山ほどいる」も事実だと思います。
これと同じで、「英語ができる方が転職には圧倒的に有利である」は、一般論として決して間違いではありませんが、別に、「英語ができないと転職できない」というわけではないし、「英語を話せる人でも転職先が全然見つからなくて路頭に迷う人はいる」も事実です。
「市場価値」とは、言ってしまえば、この程度の話に過ぎないと、私は考えています。
例えば、私は今、外資系大手IT企業で働いていて、同じオフィスで働いている人たちの平均年収は1000万円を余裕で超えています。かなり良い待遇だと思います。一方で、私が12年ほど前に入社した日系大手メーカーの平均年収は750万円くらいで、私の世代(30代前半)だと、せいぜい年収600万円前後です。