ご自身のキャリアを振り返って、ターニングポイントはどこにあったと思いますか。

石川 それで言うと、最初のSBIナビですね。でも、内定をもらった企業の中では一番条件が悪かったんです。

徳力 では、なぜSBIを選んだんですか。

石川 そこは私の叔父の影響が強いかもしれませんね。昔、SBIの北尾さんと叔父が仕事上のお付き合いあったみたいで、叔父に電話で相談したんです。「SBIから内定もらったんだけど、どう?」って。

 そしたら「彼(北尾さん)は、仕事ができるから新卒で下に付くのはいい。キャリアを積んでからではなく、いま行け」と言うわけです。

徳力 すごいですね。当時の石川さんは、インターネットを通じたビジネスがおもしろそうだと思って、SBIを選んだんじゃないんですか。

石川 はい。そういう意味で言うと、インターネットに個人的な興味はないんですよ。今でも、ですが(笑)。

徳力 ビジネスの手段として、インターネットを選んだという感じですか。

「インターネットを中心に据えて考える必要はない」なんて、あり得ない

石川 そうですね。当時は、インターネットにビジネスとしての可能性は感じていました。新卒のときに内定を3つもらったのですが、SBIホールディングス以外は総合広告会社と、外資系コンサルティング会社でした。

 その社員とお話しさせてもらったとき、どこもインターネットに対する認識が非常に甘いなと感じたんです。広告会社の人は「テレビとWEBは繋がるが、この先も中心はテレビ」と思っているし、コンサルティング会社の人は、そもそも戦略の中にインターネットをいかに活用して行くかが明確に定義されていないという時代だったんです。

腕利きマーケター、ディノス・セシールの石川森生が語る「キャリアのターニングポイント」石川森生氏 提供:Agenda note

徳力 当時は2007年だから、すでにインターネットは普及していましたよね。でもまぁ、たしかにネットバブルが弾けて業界が泥を舐めていたころでもありますね。

石川 はい、当時は「インターネットは便利だが、世界を変えるほどのものではない」と考えている人の方が多かったように思います。今となれば、その考えに賛同するところもありますが、当時、「これからインターネットを中心に据えて考える必要はない」なんて、あり得ないと思いました。

徳力 なるほど。インターネットが好きだからではなく、あくまでもビジネスとして冷静に判断したら、この波は絶対に来るから、その方向に賭けようと思ったわけですね。

石川 そうです。2007年前後は、就職先としてインターネット系の会社を探すと、最初にサイバーエージェントさんが出てきました。私の大学の同期にはインターネット好きが多かったので受けている人も多かったのですが、「インターネット大好き」じゃない私は「なんとなく違うな」と感じていました。