DAIZは特許取得の独自技術を使用し、従来製品にあった風味・食感の違和感を克服した、発芽大豆由来の植物肉を開発している熊本の企業だ。
「(米国では)ロックダウンにより食肉加工メーカーが操業停止となり、食肉が品薄となり価格高騰、販売制限もされる事態となった。代用肉として、植物肉製品のニーズが高まった。食肉危機に際してもタンパク質の安定供給が可能となり、品薄感に悩む小売チェーンにおいて評価が高まったと考えられる」(井出氏)
だが、食肉加工メーカー同様に、植物肉スタートアップもコロナによる影響を受けるのではないか。井出氏は「食肉の生産工程(肥育・解体・冷却・成形・計量)は長く複雑で労働集約的であるため、コロナ禍でサプライチェーンが寸断されてしまった。結果、食肉が品薄・価格高騰した。 一方、植物肉は、サプライチェーン寸断に影響を受けず、シンプルかつ短時間で加工が可能なことから、食肉工場に比べて影響を受けにくい。植物肉原料サプライヤーであるDAIZの場合、オペレーターが出社できないと稼働できないが、危機が明けると操業再開はしやすいと考えている」と説明する。
6.5億円の資金調達で生産体制・研究開発を強化
世界で見れば植物肉スタートアップとしては後発なDAIZだが、植物肉原料のサプライヤーとして海外のプレイヤーたちと協業関係になることを目指している。世界をターゲットにしたビジネス展開を視野に、同社は5月18日、生産体制の拡大と研究開発の強化を目的とした6.5億円の資金調達を発表した。
引受先は農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)、三菱UFJキャピタル、岡三キャピタルパートナーズ、ニチレイフーズ、そしてDAIZの関連会社・果実堂だ。このシリーズAラウンドでの資金調達により、同社の累計調達額は12億円となった。
「DAIZは価格競争力のある植物肉を大規模・迅速に供給することで世界の痛みを少しでも緩和することに努めたい。このコロナ禍で、ますます社会性の高い事業であることを実感した」(井出氏)
1月に資本業務提携を発表したニチレイフーズとは商品開発を引き続き進めるが、製品として市場に出回るまでにはまだ時間がかかる見込みだ。それとは別に、「コロナ禍の影響を見極める必要もあるが」(井出氏)、ハンバーガーチェーンと組み、まもなく試験販売を開始する予定だ。そしてAIを活用し「牛肉・豚肉・鶏肉を再現した植物肉の製造」が可能となる技術の開発を急ぐ。