年内数店舗の拡大、資金調達も検討
そこから西山氏は会社を辞めて起業を決意。アプリの開発を進めつつ、カレー店を準備してきた。
ヒントになったのは、ファーストフードチェーンの「サブウェイ」だという。サブウェイは注文時に、自分好みに野菜やハムなどのトッピングを選んでサンドイッチを作ることができる。この“自分好みの商品を作る”という体験を、キャッシュレス決済の仕組みを導入したアプリで実現しようとした。
「カレーは人によって好みもさまざまです。量も辛さもトッピングも好みが違う。それを選べるようにしました。特に若い世代の人たちは、ブランド物よりもDIY(Do It Yourself)、つまり『自分で作る』ということの楽しさを知っています。そうであれば、店頭で注文するよりも、アプリで好きなように注文できたほうがいいと思ったんです」(西山氏)
店舗に関しては、「まだ手探り」(西山氏)ということだが、セントラルキッチンを併設する根津店を除き、キッチンカーや営業時間外の飲食店を利用する“間借り”などの形態で展開している。飲食業の課題の1つでもある店舗への初期投資を抑えつつ、一気に3店舗まで拡大した。
ビジネス的な目標は現時点では非公開としたが、年内にもう数店舗の出店を準備するほか、ベンチャーキャピタルなど外部からの資金調達も計画しているという。
「普通の飲食店は営業利益率が10%弱だといわれます。今は本部費が重い状況ですが、今後アプリのレバレッジが効いてくれば、十分に回収できます。道楽ではなくビジネス。僕自身もほぼ全財産をつぎ込んでいますし、事業として成功するイメージがあるからこその挑戦です」(西山氏)
テクノロジーでコストを下げて、“毎日食べられる”を実現
好きなカレーをビジネスにするからこそ、味にもこだわる。だがそれ以上にこだわったのは、“毎日でも食べてもらえる”ための仕掛けをアプリに実装することだった。アプリはインストールしてクレジットカードを登録するという導入のハードルこそ高いが、ひとたび導入すれば、プッシュ通知機能などを活用して、再訪問の機会を積極的に作ることができる。そのため、初回割引などのキャンペーンを使ってまずは一度使ってもらうための施策を積極的に行う。
アプリ導入のメリットは店舗側にもある。事前に注文の詳細が分かるため、少人数かつ経験が少ないスタッフでも店舗の運営が容易なのだという。また将来的には、注文データから需給予測をしたり、効果的なマーケティング施策を検討したりすることも視野に入れる。