米国西海岸は“ストレスフル”

――生き馬の目を抜く西海岸のIT業界で、サイボウズカルチャーは受け入れられますか?

 それが、おもしろい現象が起こっています。

 この間、Salesforce6年、Google1年半のマーケターが入社してきたんですよ。「Googleはストレスフル、とにかく成果、成果。週5日のうち4日間家で働かせてくれ。だったら給料半分以下でもここで働きたい」と言って。我々からすると「え、そんなんでいいの?」と(笑)。

 あと彼が言っていたのは、トランスペアレンシー(公明正大)。GoogleもSalesforceも公明正大だと言っているけれども、現実には社内では、彼ら情報を隠しまくりだよ、と。それを知っているから、「サイボウズのチームワーク文化まさにすげえ、こういう会社を、チームワークを含め広めていきたい」と言ってくれる。そしてその公明正大な文化にkintoneというツールの思想がつながるはずだ、と。

 シリコンバレーの若い子のキャリアの進め方は相当にストレスフルです。シリコンバレーのすごいベンチャー企業は外から見たら、リモートワークや短時間勤務などすごくフレキシブルで、素敵なカフェテリアがあって――。そんなイメージですよね。

 ところがこの「フレキシブル」ってどういうことかというと、それはフルタイムと同じアウトプットが出せて初めて活用できるものなんですね。だから、その人たちが自由を獲得する背景にはものすごいストレスがあるんですよ。本当に能力主義、一歩でも力緩めたらクビになるから。

 なぜそうなるかというと、結論は米国のベンチャーはVCを入れてしまうからです。彼らはとにかくスピード感を持って結果を出さないといけない、速くにエグジットしないといけない。となると、ベンチャーで働くと、短期でアウトプットを必ず出さないといけなくなる。ビジネスモデルも社員に対しても、とにかく短期、短期です。

 一方我々は、BtoBだし、時間かかるよ。どこかで黒字転換になるよ。我慢、我慢と言っています。こんなやり方は、VC入れた瞬間できなくなります。最初はVCを入れようかと思ったけどやめたことが結果的に差別化、ある意味強みに変わりました。

ミレニアル世代は競争至上主義から回帰

――米国でも競争至上主義が変わりつつあるということでしょうか。

 将来的には、米国が変わろうとしている方向に日本がいるのかなと思っています。

 アメリカのミレニアル世代やいわゆるジェネレーションZはお金を儲けた世界を見た。そこに幸せもあるけど、一方で影もたくさん見てしまった。貧富の差、コンペティティブ、落ちこぼれ――トランプが大統領になった時は、アメリカの東海岸、西海岸で大成功した人々が泣いて悲しみましたからね。