CASH(https://cash.jp/)CASH(https://cash.jp/) 画像提供:Agenda note

 このように世の中は人を疑うことが前提で成り立っているわけですが、実は人を疑うという行為は、すべてコストに当たります。

 例えば、日本全国の駅には自動改札機が設置されているでしょう。これが何のためにあるかというと、切符を買っているかどうかをチェックするためです。つまり人を疑っているわけですが、自動改札機には1台何百万というお金がかかります。大きな駅であればそれが何十台とあり、さらに全国には何万の駅があるため、鉄道会社がそこにかけているコストは莫大です。もちろん、仮に改札をすべてなくせば、キセル乗車をする人は絶対に現れます。しかし、もしキセル乗車によって被る損害よりも全国に自動改札機を導入するコストの方が高ければ、導入しない方がいいと思うんです。

光本 勇介氏 株式会社バンク 代表取締役兼CEO 10歳から18歳までデンマークとイギリスで過ごす。2004年青山学院大学卒業後、オグルヴィ・アンド・メイザージャパン入社。2008年ブラケット(現ストアーズ・ドット・ジェーピー)を設立し、代表取締役兼CEO就任。2013年ブラケットをスタートトゥデイ(現 ZOZO)に売却。2016年MBOを実施し、ブラケット取締役会長に就任。2017年バンクを設立し、代表取締役兼CEO就任。2017年「CASH」をリリース、その後DMM.comへ全株式を売却。2018年MBOを実施。 画像提供:Agenda note光本 勇介氏 株式会社バンク 代表取締役兼CEO 10歳から18歳までデンマークとイギリスで過ごす。2004年青山学院大学卒業後、オグルヴィ・アンド・メイザージャパン入社。2008年ブラケット(現ストアーズ・ドット・ジェーピー)を設立し、代表取締役兼CEO就任。2013年ブラケットをスタートトゥデイ(現 ZOZO)に売却。2016年MBOを実施し、ブラケット取締役会長に就任。2017年バンクを設立し、代表取締役兼CEO就任。2017年「CASH」をリリース、その後DMM.comへ全株式を売却。2018年MBOを実施。 画像提供:Agenda note

徳力 確かに、そうかもしれませんね。

光本 結局、リスクがあるからコストをかけて与信をとることになる。しかし実はリスクによって被る損害よりもリスクを減らすためにかかるコストの方が高い可能性があります。これまでに、それを検証した人はいないので、もし僕がリスクにかけるコストはもったいないということが実証できたら、それ以降は人を疑うためのコストをかけなくてもいい世の中になるわけです。

実証にはリスクが伴いますが、僕には失うものがなかったし、おもしろい実験のネタを探しているタイミングだったこともあって試してみることにしました。それを“性善説に基づいたビジネス”と称し、人を疑わなくても取引が成り立つかどうかをテーマに会社を立ち上げたんです。

徳力 たしかに、人を疑うためのコストをかけなくてもいいことが証明されたら、世の中の事業やサービスのつくり方が根本的に変わりそうです。

徳力 基彦氏 アジャイルメディア・ネットワーク / 取締役CMO NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。 画像提供:Agenda note徳力 基彦氏 アジャイルメディア・ネットワーク / 取締役CMO NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。2009年2月に代表取締役社長に就任し、2014年3月より現職。 画像提供:Agenda note

光本 はい、大げさに言えば「世の中が変わる」と思います。そこに興味がありますね。

与信のあり方には、変革の余地がある

徳力 インターネットもボトムアップでユーザーがつながり合う仕組みのため、本質的には性善説だと思います。CASHのサービスの考え方も、光本さんのように学生時代からインターネットに触れて育ってきた世代だからこそ生まれたのでしょうか。

光本 うーん、そうでもないと思いますけど。ただ、インターネットの時代だからこそ、僕たちの実験が拡散されて、多くの人に認知されたのはあるでしょうね。

徳力 小さなスケールでのスタートでも、大きく拡大する可能性があるということですか。

光本 はい、そうですね。僕がやっている実験は、「オフィスグリコ」なんですよ。オフィスグリコは商品の棚が置かれている横に貯金箱があるだけなので、お金を入れなくても商品が取れてしまいます。でも、お金を入れてくれるだろうと信じることで成り立っている。感覚的には、それと同じです。