
「13年前からリアル店舗を造ってきましたが、これまでずっと迷路のような空間設計にこだわってきました。ワンフロアで、プチプラコスメとラグジュアリーブランドが共存している店舗はアットコスメだけ」と遠藤氏は主張する。
「そのため、一見迷路な入り組んだフロアにすることで、思わぬコスメと出合うイメージを意識しています。次々進みたくなる導線になっているはずなので、お客様には一通り回ってみてほしい」(遠藤氏)
台帳を共通にする接客改革
さらに、「共通カウンセリング台帳」を活用した接客改革も行っている。これまで、各ブランドの店舗ごとにしかなかった顧客へのカウンセリングを記録した台帳を、横断的に見られるシステムにしているのだ。
多くの化粧品ブランドでは、顧客の購入履歴やカウンセリングデータをまとめた台帳を店舗ごとに管理している。そのため、同じブランドの商品を購入するにしても、初めて行く店舗ではこれらのデータを確認できず、あらためてカウンセリングを受ける必要があった。だが、アットコスメでは、今後リアル店舗各店とECサイトで、取り扱うブランドを横断した1つの台帳で購入履歴の管理ができるようになる。系列店であれば、カウンセリングデータを基にした接客を受けることができるのだ。

「各ブランド、各店舗で台帳が分かれているのはナンセンスです。(店舗で)人が接客する意味は、その人に合ったカウンセリングが受けられることにあると思うので、ブランドや店舗が違っても、同じデータを見られるようにしました」(遠藤氏)
アットコスメがやりたいことを詰め込んだテーマパークのような店舗だが、遠藤氏は「やりたいことのうち2%ほどしか実現できていない」と語る。
「お客様とブランドがつながり楽しんでもらえることを構想すると、きりがありません。店舗というのは、開業当初が一番レベルとしては低い。これから、お客様の声も存分に取り入れ、どんどん進化していきます」(遠藤氏)
“購入前”の顧客行動をデータに
進化の第一歩として今注力しているのは、“購入前”の顧客の行動をデータ化することだ。化粧品のリアル店舗の場合、買い上げ率はせいぜい3割ほどで、店舗を訪れる顧客の7割は購入せずに店を出ていく。
「店には訪れたけれど購入しなかった7割のお客様が、何を試して何を比較したかが把握できれば、これはブランドにとってもお客様にとっても価値のある情報になるのではないか」と遠藤氏は主張する。
アットコスメトーキョーには売ることが目的でないブースが用意されている。例えば、テスターブース。高級ブランドからプチプライスコスメまで、あらゆるテスターが並び、どの顧客が何をテスティングしたかのデータを集めようとしている。