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JR西日本は12月12日、13日の2日にわたって、同社の最新の取り組みを発表する「JR西日本グループイノベーション&チャレンジデイ」を開催した。現地で見た、数々の取り組みとは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

右肩上がりの陸上養殖事業
魚介類は9種類に増加

 JR西日本は12月12、13日の2日にわたって「JR西日本グループイノベーション&チャレンジデイ」を開催した。

 昨年に続き2度目の開催となるこのイベントは、JR西日本グループの「まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす、未来を動かす」との理念の実現に向け、最新の取り組みを発表するもの。JR西日本とグループ会社、関連会社がパネル展示、実機展示など計33ブースが出展する、さながらミニ鉄道技術展だ。

 筆者はこの3年間、同社のデジタル化や新規事業など、さまざまな取り組みの担当者を取材してきた。JR西日本は信楽高原鉄道衝突事故と福知山線脱線事故という「業」や、地方ローカル線の存続問題など多くの課題を抱えているが、だからこそ現状を変えようと、多くの分野で積極的に取り組みを進めており、注目に値する企業と感じている。

 今回は12日に現地を取材し、ここ1年で具体化した最新の取り組みを取材、体験するとともに、これまで取材してきた取り組みの「その後」を確認してきた。

 まずは2020年12月に取り上げた魚介類の陸上養殖事業「プレミアムオーガニックフィッシュ(PROFISH)」だ(https://diamond.jp/articles/-/256922)。水質や餌を管理することでアニサキスを寄生させない生食でき、鳥取生まれの箱入り娘「お嬢サバ」という奇抜なネーミングのブランディングも話題となった。

 3年前の時点で外食産業、ホテル、百貨店への出荷が行われていたが、陸上養殖への理解は着実に深まっており、売り上げは右肩上がりで増加しているという。

 取材当時は6種類の魚介類を取り扱っており、担当者は「今後は淡水魚への進出も検討中」と語っていたが、現在は初の淡水魚である「クラウンサーモン」を含む9種類を取り扱っている。品種をいたずらに増やすのではなく、売れる魚の開発を第一にしたいとしながらも、新たな養殖について勉強は進めているという。

 ところで先月、鳥取県岩美町の陸上養殖業者タシマボーリングが、「お嬢サバ」の妹と銘打って「べっぴんサバのさばみちゃん」の試験生産を始めたと報じられた。ニュースにはJR西日本の名前がなかったが、いったいどういう関係なのか聞いてみると、実は「お嬢サバ」の生産を担当している企業こそタシマボーリングとのこと。

 この会社、名前の通り井戸や温泉の掘削、地質調査などボーリングが本業だが、養殖で使う地下水をくみ上げる井戸の掘削を担当したことをきっかけに、JR西日本から施設の管理と生産を引き継ぐことになった。JR西日本には地場産業として定着させたいという意識があるため、「お嬢サバ」と並行した「さばみちゃん」の展開も歓迎しているという。