直感的な操作が可能な
「零式人機ver.2.0」
2022年5月の記事(https://diamond.jp/articles/-/302602)で紹介した汎用人型重機「零式人機ver.2.0」は、会場に実物を持ち込み、操作体験も可能な「目玉」として展示された。
これはJR西日本と日本信号、そして「力制御技術」「パワー増幅バイラテラル制御技術」など先端ロボット工学に関するコア技術の知的財産を保有する人機一体の3社が2020年から共同開発しているもの。
マジンガーZやガンダムに始まり、パトレイバーやエヴァンゲリオンなど、今では誰もが知っているパイロット搭乗型のロボットは「男の子」ならずとも心躍る未来像だ。零式人機はさすがにロボット内に搭乗はしないが、VRゴーグルとロボットの視点を連動させ、レバー操作に応じて両腕が動く。
筆者は今回、初めて実際に触ることができたが、数分もあればある程度は動かせるようになるほど、操作は直感的だっだ。話には聞いていたが、体験して驚いたのは、ロボットにかかった力が操作レバーにフィードバックされる制御技術だ。これがあるのとないのとでは、操作の「リアル感」は段違いだろう。
発表から1年半、目立った続報がないため「しょせん、コンセプトモデルに過ぎなかったのでは」という声も聞かれたが、実用化に向けた試行錯誤は着実に進んでいた。
現在は実際の線路内で支障なく作動するか課題を洗い出しながら、実際の作業を想定した機器使用などを検証中。今後は法規や社内基準への対応を中心に、いよいよ実用化に向けた最終段階に進む。2024年度中には「使える形」にして、塗装や樹木の伐採など実際の作業を行いながら課題出しを行っていく。
人機一体代表取締役社長の金岡博士は技術的には完成の域にあるとの自信を見せつつ、今後は効率的で洗練されたロボット用の道具開発など、実装上の気付きを見つけるフェーズに入ると語る。
同時に金岡博士が強調したのは第一歩のハードルだ。どこかの企業で実際の現場で使ってみて、ちゃんと使えることを示せれば他社や他業界に一気に広がり、技術的成熟とコストの削減につながっていく。
憧れから保守作業員を志す人が増えるかもしれないし、腕力や体力がない高齢者や女性の活躍の場も広がるだろう。そうした中、JR西日本が先陣を切ったのは本当にありがたいと語った。同様の高所作業がある建設業界や電力業界が既に興味を示しているそうだ。
また今回は新たに、重量物の取り扱いが可能な汎用単腕重機「零二式人機ver.1.0」も展示された。こちらは高所作業車に設置した操作席、またはアームの先端にあるグリップで操作可能だ。人型のみならずさまざまな形のロボットを同時に示していきたいと金岡博士は語る。
コロナ以降、JR西日本が本気で取り組むイノベーションは、ようやく形になりはじめたところで、本格的な展開はこれからだ。また同社は自社で実用化するだけでなく、業界全体を変えていきたいという思いを抱いている。今後も取り組みの進捗を随時、お伝えしていきたい。