「行動経済学」について理解を深めることは、様々なリスクから身を守るためにも、うまく目的を達成するためにも、非常に重要だ。『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』を推薦する、東京大学大学院経済学研究科教授の阿部誠氏は、著書『大学4年間の行動経済学が10時間でざっと学べる』などで最先端の知見をわかりやすく紹介している。私たちは仕事や日常生活に行動経済学をどう活かせばよいのだろうか? 阿部教授にお話しを伺った。

【東大教授が教える】「セール」で無駄遣いをして、後悔する人の共通点Photo:Adobe Stock

「欲しいから買う」のではなく「不安だから」買ってしまう

「買うつもりがないものを、セールだからと買ってしまい、後悔する」ことはありませんか?

とくにこれから「歳末セール」や「新年初売りセール」で買い物をする方は多いと思います。

しかし「安いからお得だ!」と思って買い物をすると、どうしても無駄遣いが増える傾向があります。

買い物すること自体が、生きがいや楽しみであるなら良いのですが、そうではない場合はできるだけ無駄なお金は使いたくないですよね。

買い物をするときは「定価でも買うか」を判断基準にしましょう。つまり、「本当に必要なものかどうか」を考える必要があります。

「もともと必要だったものが、セールで安くなっている」のであれば、お買い得です。

そうではなく、「安いから買っておこう。あとで使うかもしれない」「安いからとりあえず買おう!買ったら使うだろう」と考えている時は本来必要でないものを買ってしまう=無駄遣いになる可能性が高くなります。

ではなぜ、私たちはこのように考えてしまうのでしょうか。

『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』のなかでは、「セールのときに買ってしまう」心理の背景には、「セールの時期を逃すと、もうこの安い値段で買えない」という「何かを逃すことに対する恐怖」があるからだ、と解説されています。

つまり、単純に「安いから買う」のではなく、「安いものを逃して、損した気分を味わいたくないから買ってしまう」のです。

一方で、本当に必要なものを、セール価格で安く買えた時は、通常価格で買うよりも満足感は高まります。経済学ではこれを「取引効用」といいます。

このような心理をふまえ、冷静に「買う・買わない」の判断を行うことで、セールを賢く活用することができるのです。

(本稿は『勘違いが人を動かす──教養としての行動経済学入門』の発売を記念し、東京大学大学院経済学研究科教授 阿部誠氏へのインタビューをもとに作成しました)