川勝知事の解決策「部分開業」案は
本人が過去に否定していた

 川勝知事が議会で激ヅメされるシーンも目立ってきた。10月10日の記者会見で川勝知事は「私がJRの意思決定者であれば解決策を出せる自信はある」と話した。静岡県に10年で1600億円を超える経済効果があることがわかっているリニアの開業を、川勝知事がただ妨害し時間を引き延ばしているのは、なぜなのか。関係者は一様に疑問に思っていたものの、地元で川勝知事を応援する静岡新聞を中心に、それについて聞くことを避けてきた。

 しかし、12月12日の県議会では、中田次城議員(自民)が「解決策とは一体何なのか?」と質問した。川勝知事は「JR東海との対話を速やかに進めるために、意思決定者である丹羽(俊介)社長には強いリーダーシップを持って取り組んでほしいとの思いを述べたものである」といつものようにはぐらかしたものの、中田議員は「ルート変更を意識して言ったのか?」と再度詰め寄ると「ルート変更は念頭にない」と否定した。

 そして、重ねて「解決策」とは何なのかについて質問を受けた結果、「現行ルートを前提にした上で、できるところから、つまり開通できる状況になった部分から開通させることが営業実績となり、解決策となると考えている」などと発言した。

 ゴールポストを動かし続けてきた川勝知事が、議会に激ヅメされて、この場で表明させられた「解決策」とはなんと「部分開業」だったということだ。「部分開業」が静岡工区の問題解決に一体どうつながるというのか。しかも、この部分開業案は、川勝知事自身が過去に実現が難しいものとして、すでに主張を取り下げたものだ。この答弁を聞いた誰もが耳を疑ったことだろう。

 つまり、一連の質疑を通して、川勝知事には解決策などなく、とにかく建設を止めろと言っているだけであることがハッキリしてしまった。

解決策がないのに
リニア推進を表明することの矛盾

 川勝知事は、表向き「リニア中央新幹線の工事着工を推進する」と言いながら、実際には工事を徹底的に妨害する戦略を取っていた。しかし、議会によるこの鋭い質問を受けて、その発言が単なるうそであることが明らかになった。このように二枚舌を使って事実をごまかし続ける知事に対しては、メディアも議会に負けないよう、川勝知事の発言に対してしっかりと追及する必要がある。

 静岡県知事の定例記者会見の模様はYouTubeで公開されているが、川勝知事が質問に直接答えず、関係のない自説を延々と続けることが多い。多くの場合、メディア側は2回の問い詰めで諦めてしまうことが多いが、記者たちは細かく質問を詰めていくべきだ。不信任案の決議を恐れる川勝知事は、議員の質問には真摯(しんし)に答えざるを得ない状況にある。メディアだって、その気になれば、川勝知事の本音の答弁を引き出すことが可能だろう。

 川勝知事には「解決策がない」ことが明らかになった今、明らかにしておくべきは「解決策がない(川勝知事にとってリニア計画を止めるしか道はない)のに、リニア推進を表明することの矛盾」を答えさせることだ。どんなにはぐらかしを弄(ろう)しても、詰め将棋を一手、一手打っていくような徹底した追及がここでは必要だ。

 この矛盾を認めさせることで、この2017年に始まった川勝知事の一連のリニア妨害が、ただの嫌がらせ、ムダだったことが判明する。そうなれば、この間の県政停滞の責任を取らせるべきであり、不信任決議案提出の、大きな、大きな大義となり得よう。

 知事任期満了を待つと、川勝知事の対抗馬が与野党間で乱立して、川勝知事の再選に有利に働く可能性が高い。任期途中で突然の知事選へと持ち込むことで一対一の対決ができるかもしれない。そうなれば、勝てる可能性はグンと増すだろう。