どうして1秒で評価が決まってしまうのか

 それは2分間のネタがつまらないからではありません。むしろ、お笑いの勉強をしてきた人たちのネタですから、多少の差はあれど、ほとんどの生徒がそれなりのネタを仕上げてきます。そのため、「普通に良い」という意味では評価にそこまで差は出ません。

 では、どうして評価をするのに2分も必要としないのでしょうか。

 理由はシンプルで、テレビでのネタ披露を想定すると、お笑い芸人は1秒で「おもしろそう」と思わせなければ、見ている人にチャンネルを変えられてしまうからです。

 皆さんもなんとなくお笑い番組にチャンネルが合わさったときに、「微妙」と思ってチャンネルをすぐに切り替えた経験があるのではないでしょうか。お笑いに関わる人間として悲しいことではありますが、「おもしろくなさそうだ」と感じさせてしまったのですから仕方がないと思っています。

 これはビジネスでも同じなのではないでしょうか。会った段階や打ち合わせの最中で、「なんだかこの人仕事できなさそうだな」と不安に感じてしまうときはいつだって一瞬です。

 つまり、お笑い芸人やビジネスパーソンのような人の印象に残る人は「ネタそのもの」「話し方」「立ち振る舞い」「姿格好」など、どんなことでもいいので、「もう少し見てみたい」「なんか聞いてみたい」とお客さんに一瞬で思わせなければいけないのです。これは、ネタだけでなく、トーク番組やクイズ番組でも同じです。

 このことを踏まえて、ネタ見せでは、無茶は承知のうえで「1秒で輝くもの」の表現を求めています。
これまでたくさんのお笑い芸人の卵を見てきたなかで、今、お話しした「1秒で輝くもの」を表現できた印象的な生徒が4人いました。