筆者は圧倒的に後者である。先述のファースト不幸を自分が感じるであろうこと、そしてそこから予想されるセカンド不幸が痛ましく思えるから、「実写化」と聞いても手放しで喜ぶ気分になれない。
しかし、気の持ちようによっては自分の中に生まれ得るファースト不幸を根絶して、実写化の楽しい部分だけ享受することができるのではないか、と思いついた。つまり、実写化作品がどのような出来であっても「原作がけがされた」と感じない心持ちを構築するということである。
実写版『幽白』の配信が開始されてから評判を聞いていると、一部の配役に違和感があると騒がれていた。実写化ならではの被害者が生まれている形であり、それが心苦しく思われた筆者は、「『原作がけがされた』と決して思わないようにして視聴しよう」という思考実験めいた決意を胸に、視聴に臨んだのであった。
そして成果があったので、これをシェアしたい。上手くいけば、「実写化」に惑わされず、ネガティブな感情なく実写化を楽しむことができるようになる、次世代の鑑賞法である。
「原作がけがされた」と思わない
作品に「期待しない」境地が安寧を導く
「『原作がけがされた』と思わない鑑賞法」には、実写化されたその作品を、原作と切り離して全く別の作品としてとらえるアプローチが必要となる。言ってみれば、原作ファンは「期待をゼロにして臨む」ということである。視聴前の作品へのワクワクがゼロになるので一見ネガティブに思えるかもしれないが、視聴中にワクワクを取り戻していける仕組みなので案ずることはない。
原作を知るファンは、実写版が原作をどの程度再現しているか、また、どこを変えてきたかを発見しながら視聴していくのが楽しみとして感じられるはずである。
さて、そうして実際に視聴に臨んだ。「おお、こんな感じで再現したのだ」と面白く思いながら進んでいき、話題になっていた古川琴音さん演じる霊界案内人・ぼたんが登場した。主人公・浦飯幽助をはじめとするキャストは原作の面影を感じさせる抜擢であったが、確かにぼたんは原作の面影が薄かった。
しかし異界の存在らしい異質さと、原作に通じるぼたんが備える親しみやすさが表現されていて、原作にはない妖怪っぽさとでも言おうか、それがしっくりと来る感じもあり、この“ぼたん”はおそらく彼女にしか演じることができず、難しい役どころをよくここまで演じ切ったものだと感心させられたのであった。