一方、不支持派も意見を発するが、賛辞ではなく批判になるので、ともすればトーンが誹謗中傷の類に陥りやすい。また、支持派が多いほど世間の評判はそれ一色に偏ろうとするので、不支持派はその中で己の意見を聞いてもらうべく声を大きくしたり、必要以上に過激な言葉を用いたりすることがある。
制作サイド、特に視聴者にもっとも近い象徴的な窓口となる役者には批判が集まりやすく、誹謗中傷が彼らを傷つける恐れがある。これが、ファースト不幸の結果引き起こされる「セカンド不幸」である。
昭和ジャンプ世代の筆者からすると、リアルタイムで夢中で読んだあの『幽白』であり、当時からもはや30年が経っている今、まさか「ああ、幽白の実写ドラマが見てみたい」などと願っていたはずもない。当時から原作を知る諸氏はおそらく同様の思いであろう。
あれはあれとして完結した作品であり、ひとつの不可侵な聖域としても完成している。であるから人気作品の実写化は、さながら健康な体にわざわざメスを入れるような「余計なお世話感」がつきまとう。
むろん、実写化がもたらすいい面もある。ファンは別の角度から見せられるその作品を楽しむことができ、原作未履修の視聴者を新たにファンとして獲得することで、同作品界隈のさらなる盛り上がりが期待できる。単純に好きなものは、共有できる人が多い方が嬉しいものである。
また、役者や製作者にとっては作品を通して自分をさらに知ってもらえるチャンスとなる。これに加えて、実写化によってお金、すなわち経済が動く。これらは実写化のメリットである。
実写化によって起きる
“ファースト不幸”を根絶する試み
人の認識傾向を測る設問に、「コップに水が半分残っているのを見たとき、『半分しか残っていない』と『半分も残っている』のどちらを感じるか」というものがあるが、実写化でも同種のものが作れるかもしれない。すなわち「『好きな作品が実写化する』と聞いて、嬉しいか、暗澹たる気分になるか」である。