住宅のコンクリートブロック塀が
5段から2段分まで沈み込んだ

 次に、内灘町~かほく市における液状化被害について見てみよう。

 金沢市の北に位置し、「河北潟」と呼ばれる潟湖およびその北側に広がる干拓地の西岸、日本海と河北潟との間にある内灘砂丘の東側の低地沿いで、確認できた範囲で8.5キロメートル程度、帯状に液状化現象が発生していた地域が認められた。

 内灘町鶴ケ丘では、鶴ケ丘小学校より南側(青丸)と、東側(赤丸)で被害が目立ったが、両地点では若干異なる被害の特徴が見られた。小学校南側の地点は、おおむね標高2.5~3.8メートル(地理院地図DEM5メートルを参照、以下同じ)の、小学校東側の地点はおおむね標高1.3~3.3メートルであった(下図左)。

【現地ルポ】能登半島地震で「住宅倒壊」続出のなぜ、浮かび上がった「災害対策の課題」とは?内灘町鶴ヶ丘地域の調査地点地図(地理院地図に加筆)。左は自分で作る色別標高図、右は地形分類(自然地形)。さくら事務所作成

 この地域では、内灘砂丘本体のある西側から、河北潟の東側に向かって標高が低くなる傾向がある。地形区分は(下図右)、黄色は砂州・砂丘を示し、黄緑色は氾濫平野を示す。小学校南側では、ラーメン店の駐車場付近での地盤変状が目立った。看板や電柱の傾き、駐車場の舗装がせり上がって衝突するような様子があり、せり上がっている地点より東側で、道路の沈下が見られた。

【現地ルポ】能登半島地震で「住宅倒壊」続出のなぜ、浮かび上がった「災害対策の課題」とは?提供:さくら事務所

 標高4メートルの標高点がある交差点より1本西側の通りでは、若干の噴砂や道路の沈下のほか、通りの西側の住宅付近、住宅前の側溝に沿って盛んな液状化噴砂丘が見られた。住宅は沈下して、玄関と基礎部分が大きな隙間となり、壁やタイルの剥離が発生。住宅前のコンクリートブロック塀は傾きながら地盤に埋没し、5段あったものが2段分まで沈み込んでいる。

【現地ルポ】能登半島地震で「住宅倒壊」続出のなぜ、浮かび上がった「災害対策の課題」とは?提供:さくら事務所

 小学校東側では、内灘町消防署に20センチメートルほどの地盤から抜けあがっている現象(建物は杭で支持されるなど、周りの地盤が沈下して段差が生じる現象)、地下配管の途絶が見られた。

 杭基礎のあるマンションや鋼管杭系の地盤改良工事が行われている住宅では、住宅の不同沈下は免れても、このような「抜け上がり」現象があると上下水道などが途絶することが想定される。もっとも、1軒だけ途絶を免れても、周囲の地下配管が損壊し、また勾配が変わることで機能不全となることも考えられる。

 交番がある通りから東側に1本入った通りで、特に噴出が激しい傾向が見られた。住宅や車は砂に埋没し、大きく不同沈下した住宅もあった。上の地図右側の地形区分で見ると、黄色の砂州・砂丘と、黄緑色の氾濫平野の境目辺りに相当する。噴砂が多量に吹いている付近の住民によると、「滝のように砂と水が噴き出して流れてきた」という。

 築十数年という住宅でも不同沈下が発生し、どのように修復していくか困っていた。現行の耐震基準で耐震性が高い住宅であっても、地盤の液状化に対して対策がなければ無防備といえる。