住宅を建てるときは
「立地のリスク」が最重要
現状、能登半島の甚大な被害とは別に、石川県の一部(新潟県も同様か)でも家に住めない状況で、上下水道も途絶、今後の生活再建すら先が見えないという人がいることが調査でわかった。
土地の災害リスクを深刻に考えていない人もいるかもしれないが、ひとたび大地震などが発生すると生活が一変する。我が家を失ったり、住めない状態になってしまい、最悪の場合は命を失うこともある。
しかしながら、現状の法体系においては、災害リスクを個々の居住世帯に通知する定めは基本的にはない。
宅建業法では不動産取引の際に、土砂災害(特別)警戒区域ほか、津波災害警戒区域、大規模盛土造成地など、水害ハザードマップ(水防法に基づくもの)の該当有無について説明する義務がある。ただし、これは不動産の取引の際、それも大半は契約時の重要事項説明のタイミングのみである。
これも今住んでいる家のリスクを示すものではない。しかも、地震時に揺れやすい地盤や液状化のリスクが高い地域、ハザードマップにかかっていない場合などは、通知義務の対象ではない。
側方への地盤流動と著しい沈下を伴った液状化被害は、1軒の敷地内の家屋沈下修正のみで解決できる問題ではない。元通りに居住しようとしても、個人で賄えるレベルではない。また、対策をしなければ、同程度かそれ以上の地震が起これば同じようなことが繰り返されてしまうおそれもある。
被害が発生した各地点は、ハザードマップなどでは一定のリスク表示がなされているエリア、またはその近郊であることも多かった。それを認知していたのか、最悪はどのようなケースが起こるか、それによって対策をどうしているか。実際には想定できていなかったこともあるのが実情だろう。これは今回の被災地だけにとどまるものではない。
地震、水害、土砂災害などの対策を考えるとき、まずは立地のリスクを見極めることが重要だ。立地は後から変えることはできず、地盤の課題などは家1軒の個人レベルでの対策が難しいこともある。側方流動を伴う液状化のような現象、また盛土地の被害を軽減させようという場合、街区全体での対策が必要なレベルであると考えられる。
立地によっては、地震で津波や火災、また近隣の住宅の倒壊や地盤ごと崩落、流動するようなこともなく、何の対策もしなくても耐震性の高い家さえ造っておけば、倒壊せずに住み続けられる立地もある。このような自然災害リスクは、地価に影響せず、地価が高いからといって災害リスクも低いということには必ずしもつながらない。
こう書くと少し語弊があり、複数の研究で水害履歴地の地価などに影響があることは知られている。特に重要事項説明に関連する水害などでは影響があるケースもある。
しかし、被災後すぐに地価が上昇傾向を示した千葉・浦安市や東京・武蔵小杉周辺の例にもあるように、いまだその立地のブランドや商業的価値と災害リスクが見合っていない面もある。
「立地のリスクはどこにでもある、ゼロにはならない」という論調を目にすることもある。しかし、限りなく床上浸水がなく、土砂災害が起きず、地震で避難の必要がない立地がある一方で、それらのリスクが高く、何かあれば自宅の生活基盤そのものが失われかねない立地というものが存在するのが事実だ。
まずは立地のリスクを正しく知り、どのようなときに避難する必要があるのか。住宅の耐震性は十分か。関心を持って自ら調べて、知ってほしい。
液状化地域であれば建築前に調査や対策を行う、新築する際には耐震等級3の家を建てる、既存住宅であれば耐震診断・耐震補強をするというステップを踏むことで、まず我が家の倒壊で命を失うということもなくなるだろう。
その次に、ケガをしないための家具配置や間取り、そして家具の固定というステップが必要だ。
最後に、ようやく備蓄というステップが望ましい。決して日本全国どこでも、能登半島は対岸の火事ではない。トイレ不足や足りない救助など、南海トラフ巨大地震や首都直下地震が発生した際は、都市部のあちこちで同じようなことが起きる。人口密集地においては、より大きな被害となることが想定される。
※詳細な調査レポートについては、さくら事務所のホームページ(https://www.sakurajimusyo.com/opinion/disaster/334/)を参照