ハザードマップで未指定の場所でも
土砂災害のおそれがある

 まず、金沢市田上新町および津幡町緑が丘など金沢市付近の被害の特徴を見てみよう。

 金沢駅から南東の造成地にある田上新町では、複数の住宅が斜面を崩落した。確認できた住宅は形を残したまま崩落していた。やや起伏のある丘陵地のへり、標高85メートル程度の地点から崩落が開始している。3棟の住宅と自動車、道路が崩落しており、それらは地盤ごと崩落しているような様子が見て取れる。規制線の外からの観察では、ブルーシートに覆われて崩れた面などは確認できなかった。

【現地ルポ】能登半島地震で「住宅倒壊」続出のなぜ、浮かび上がった「災害対策の課題」とは?提供:さくら事務所

 地理院地図から見ると、崩落した南西側の斜面に細い道路があり、この付近までの斜面の角度は21度ほどと、著しい急斜面という様子ではなかった。崩れた下側のブルーシート上には水が乗っており、地下水が多かったことを示している。

 対象地付近の造成地には一部に大規模盛土造成地があるが、対象地は指定から外れている、対象地付近は尾根から下る斜面にあり、特に谷筋という印象はない。「谷埋め盛土」である可能性は低いと考える。斜面を削った切土地であるが、自然地盤または南西の斜面にあった「腹付け盛土」の崩落と考えるのが自然だろうか。

 土砂災害ハザードマップでは、対象地の北側1棟より北の一帯は、土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)付近にあるように感じるが、少なくとも対象地の南東側の2棟は区域の外にあるように見える。

 3棟は斜面との位置関係は大きく変わらないようだが、何らかの指定に満たない要因などで、指定されていないケースがある。通常、斜面の「下」の家ががけ崩れの被害に遭うことが懸念されるが、崩れなどによって上部も危険な場所となってしまうことが考えられる。

 ハザードマップ、特に土砂災害ハザードマップにおける(特別)警戒区域の場所だけでなく、その周辺で指定されていない場所でも土砂災害に見舞われることがある。「ギリギリセーフ」がないことを認識してほしい。

 津端町の北東部の丘陵地にある緑が丘地域では、丘陵地にある造成地の斜面の上にある住宅で、カーポート部分と前面道路の崩落が認められた。標高42.5メートル程度から、28メートル程度まで下る斜面の上方にある。斜面の角度は21.5度ほどであった。

 家屋への被害の程度は近づけなかったため不明だが、著しく急峻ではないものの丘陵地の斜面の上にある住宅の被害として、金沢市田上新町に似た被害と考えられる。