JR東海とJR西日本は昨年9月、東海道・山陽新幹線「のぞみ」について、繁忙期に全席指定席化すると発表した。それから初めてとなる今回の年末年始。自由席をなくしたことで、混乱は生じなかったのか。帰省ラッシュのピークに東京駅を訪れ、各列車の利用状況を取材した。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
JR東海が「のぞみ」を
全席指定席化した狙い
東海道新幹線が「のぞみ」主体のダイヤになった2003年以降、初めて「のぞみ」全列車全車両が指定席化された今回の年末年始。ゴールデンウイーク、お盆を加えた三大ピーク期は混雑率が最大200%に達する自由席をなくして混乱は生じないのか、昨年9月の発表時から懸念の声が相次いだ。
JR東海は駅、車内のポスターに加え、テレビ、新聞、ネットの各媒体で大々的に告知したが、テレビ・新聞離れが進む中、帰省時しか鉄道を利用しない人たちに届くのか、あるいは指定席が早々に売り切れて帰省難民が続出するのではないか不安視された。
実態はどうだったのか、筆者は帰省ラッシュのピークである12月29日午前10時~12時に東京駅を訪れ、指定席化された「のぞみ」、自由席が存置された「ひかり」を中心に、各列車の利用状況を取材してきた。
改めて、全席指定席化について確認しておこう。
東海道新幹線は原則として1編成16両中、「のぞみ」は3両、「ひかり」は5両、「こだま」は10両に自由席が設定されている。これまでは三大ピーク期も同様の設定だったが、今回から「のぞみ」は全列車全車両が指定席となった。
ただし、デッキに立席であれば自由席特急券で乗車することは可能だ。とはいえ東京から名古屋まで1時間35分、新大阪まで2時間25分を要することを考えれば、よほどの事情がない限り、立って行くのは現実的ではないだろう。
指定席化の狙いについてJR東海は「日・時間帯によっては指定席が早い段階で満席になり、指定席のニーズが増している」として、「全席指定席化することで、始発駅以外の駅、特に品川、新横浜駅などからの利用を含めて着席機会を増やし、サービスアップを図る」と説明。また、混雑がもたらす遅延が解消されると説明する。
自由席3両の指定席化で、1編成あたりの指定席は3割増加。加えて2020年3月のダイヤ改正で、それまで1時間あたり最大10本だった「のぞみ」が12本化されたため、コロナ前と比較して輸送力は2割増加している。JR東海の決断の背景には、十分な座席を供給できるという自信があったわけだ。