JR東海のもくろみは成功したが
車内販売終了による課題も
そもそも例年より利用者が少なかったのではないか、つまり指定席化によって利用控えが起きたのではないかという疑問があるかもしれない。新型コロナウイルス感染症の5類移行後、初めて迎えた年末年始輸送は、日本航空と全日空の予約数が対2018年比85%程度、高速道路も事前の予想ほどの渋滞が起きなかったなど、全体で見れば低調だったかもしれない。
しかしJR東海が1月5日に発表した「2023年度年末年始期間の御利用状況」によれば、12月28日から1月4日までの8日間の東海道新幹線の輸送人員は317.8万人で、コロナ禍前の水準(2018年度は10日間で392.1万人)に並んだ。
下りピークは12月29日の29.9万人(同31.0万人)、上りピークは1月3日の31.0万人(同28.2万人)で、こちらもコロナ前と同等か上回る数字を記録しており、少なくとも東海道新幹線に影響はなかった。
「のぞみ」の自由席特急券と指定席特急券は東京~新大阪間で約1000円の価格差(繁忙期)があり、自由席利用者にとっては実質的な値上げになるのは確かだが、JR東日本は以前から東北新幹線「はやぶさ」や北陸新幹線「かがやき」を全車指定席で運行しており、利用者に受け入れられている。次回以降、指定席を取る人も増えるだろうから、JR東海のもくろみは成功したと言えるだろう。
ただ課題も見えた。昨年10月末に車内販売が終了し、事前に売店などで飲食物を購入しなければならなくなって以降、初めてのピーク期だったが、コロナ禍で売店の半分以上が休業中のため、昼の時間帯は売店に長い列ができていた(下写真)。
もちろん車内が混み合うピーク期では車内販売がなかなか来ないため、これまでも売店は混雑していたのだが、車内販売を終了するのであれば、この辺りにも配慮が欲しかった。