ホーム上での混乱懸念は
東京駅の準備もあり杞憂に
では実態はどうだったのか。
結論から言えば懸念はいずれも杞憂(きゆう)であった。東京駅10時33分発「ひかり639号」から12時03分発「ひかり511号」まで、いくつかの列車の利用者数を数えてみたが、「のぞみ」のデッキに立っていたのは新大阪行きで1両あたり数人。座席確保が必須の遠距離利用者には元々、指定席を購入する習慣があるためか、広島行き、博多行きの列車に立ち客はほとんどいなかった。
自由席利用者を一手に引き受けたのが、東京~新大阪間を2時間50分程度で結ぶ「ひかり」だ。「のぞみ」より30分ほど余計にかかるが、4時間を要する「こだま」は選びにくいため、必然的にそれなりの混雑となっていた(下写真)。
「ひかり」の列は発車の30分ほど前から伸びはじめ、列車のドアが開くころには80~100人程度に達したため、ホームはそれなりの混雑になった。だが新幹線の定員は1両あたり100席程度あるため、一見すると長蛇の列でもあっという間にのみ込んでしまう。発車直前に並んだ人を除けば、ほとんどの人が座席にありつけたことだろう。
初めての取り組みが失敗すれば今後の指定席化は困難になるため、東京駅もさまざまな準備を重ねた。通常、自由席の乗車列は1両あたり2つのドアごとに形成されるが、今回はあえて乗車列を1ドアに限り、車両の左右から座席争奪戦が起こることを避けた。なお反対側のドアには後続列車の乗車列を設定し、分かりやすくするとともに、ホーム上の混雑を防いだ(下写真)。
もうひとつの「ひかり」自由席の特徴は外国人旅行者が多いことだ。というのも彼らが使う「JAPAN RAIL PASS(ジャパン・レール・パス)」は、追加料金を払わないと「のぞみ」を利用できない。追加料金不要で指定席を予約することはできるのだが、やはりハードルが高いのか自由席の利用が多くなる。当日もかなりの外国人旅行客がいたが、混乱はほとんど見られなかった。