長時間の「座りっぱなし」は様々な病気のリスクだ。ただし、週末にでもまとめて身体を動かせば、リスクを相殺できると考えられていた。ところが──。
京都府立医科大学内分泌・乳腺外科の研究グループは、1日のなかで(1)座る、(2)ソファなどでゆったりくつろぐ、(3)横になる、など身体活動量が1.5メッツ以下の「安静~準安静(以下、座位行動)」状態と乳がんリスクとの関連を調べている。
研究者らは、文部科学省が助成する「日本多施設共同コーホート研究・J-MICC研究」のデータを使い、35~69歳の日本人女性(平均年齢54.5歳)3万0023人について、1日の座位行動の時間と乳がんリスク、および余暇の運動量や頻度、1日の歩行時間との関連を解析した。
9年超の追跡期間中、554人が乳がんを発症。座位行動が7時間未満のグループと比較すると、7時間以上では乳がんリスクがおよそ1.4倍高かった。
問題の「運動で座位リスクを相殺できるか?」については、1日のなかでちょこまか身体を動かし、合計で1週間当たり1時間のジョギングに相当する身体活動をこなしても、乳がんリスクは軽減されないことが判明した。
それどころか、週に3回以上のまとまった運動も、1日1時間以上のウオーキングも、1日7時間を超える座位行動の影響を打ち消すことができなかったのだ。
年齢別にみると、47~55歳の閉経前後の女性は、7時間を超える座位行動の影響をより被りやすい傾向があった。
研究者は「日本の女性の場合、乳がんの発症に関しては座位行動時間のリスクが運動の効果を上回る」とし、身体活動に加えて、座位行動の短縮を勧めている。
オフィス回帰の流れが顕著だとはいえ、テレワークとのハイブリッドで座位時間は確実に増えているだろう。
自宅で仕事をするときは、コアタイムを3、4時間とし、残業を含めた就業時間を6時間程度に収めよう。パソコンの前にダラダラ居続ける時間は、将来の疾病リスクになるのだから。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)