ただ、このときに距離感を意識しています。距離感によって、「具合はどうなの?」と声をかける場合もあれば、単なる雑談をあえてすることで、そこから状況を見るようなこともします。

 人を見るときに関心を持って見るとちょっとした変化に気づくようになってきます。自分がいつも気にしているものは、位置が変わったとか、色が変わったとか、自分の物を誰かが使ったかもとか、ちょっとした変化に気づくはずです。それと同じように、人に対しても、気にしていればちょっとした変化に気づくと思います。

 気づいたときに、あまり深く考えずにすぐにアクションを起こせるか、声がけをするとか、何か手を差しのべることができるかということが大事です。

 ここでのテーマ、部下のメンタルヘルスについても、心の病と認定され休職に追い込まれる前に、アクションを起こすことが重要だと思っています。当たり前のように思われるかもしれませんが、これがなかなかできていません。

 普段とは違う部下の様子を見て取れたら、「疲れていないか」と声がけするとか、「ちょっと来い」と呼んで話をするとか、きわめて昭和っぽいアプローチですが、こうした気くばりは必要だと思います。

 先日も某社の男性スタッフのメールに気にかかることがあったので、すぐに呼び出して40分ほど話をしました。何か気になることがあったら、躊躇せずに動く。特にメンタルヘルスについては、手遅れにならないうちにアクションを起こすことがリーダーには求められます。それも気くばりです。

仕事の全体像を伝える

 リーダーとして、仕事の全体像を部下に伝えるということは、欠かせない気くばりといえます。往々にしてこのことは忘れられがちです。これができていないと、部下に仕事を依頼するときなど、仕事の内容、仕事の目的を的確に伝えることができません。最近、私はこれを特に意識してやっています。

 単に「自分の仕事の一部を手伝ってもらう」というときの依頼の仕方と、「この人を育てたい」「自分がやっていることから学んでもらいたい」というときの依頼の仕方は違うと思います。

 自分の仕事の一部を手伝ってもらう場合は、納期をはっきり言うようにしています。このケースの場合、手伝ってもらう相手もほかに仕事を持っているはずですから、

「いつ頃までにこういう仕事が発生すると思いますので、よろしくお願いします」

 というふうに、あらかじめ言うことを心がけています。