一方で、育てたいと思っている場合の例です。最近インディゴブルーに仲間として入ってきてくれた人がいて、その人には全体像をわかっていただくために、「この仕事の狙い」というメモを渡しました。

 具体的には、「全体の狙いは○○で、A→B→Cという順番でおこないます。それぞれの狙いは○○ということです」というメモを読んでおいてもらい、ミーティングの中で解説するようにしています。実際には組織編成のワークショップみたいなことをやっていくのですが、ワークショップが終わったあとで、感想や気づきを聞いています。これはワークショップをリードする私のリフレクション(振り返りを通じた学び)にもなっています。

 ここでのポイントは、口頭ではなくメモを渡すということです。

 まずメモを渡したうえで口頭で伝えます。

 口頭で伝えるというのは、空中戦ですから、言っているそばから情報が消えていきます。つまり、「わかったつもり」になってしまいます。その時の雰囲気で「そうですね」とわかったつもりになるので、あとで何回もやり取りしたり、書き物を渡したりすることになって余計な手間と時間を要します。そうするとこちらも依頼された側もペースが崩れ、お互いに気持ちが折れたりすることにもなりますね。そうなるくらいなら、最初にメモを読んでもらっておいて、そのあと口頭で話したほうが間違いないと思います。

 これはクライアントに対する場合も一緒です。もちろん家族でも一緒です。

「それ、言ったじゃん」ということにならないためにも、重要なことは、メモなどを渡したうえで口頭で伝える、というふうにしたほうがいいと思います。余計なトラブルを回避できます。

部下を正しく評価する

『リーダーの気くばり』書影柴田励司『リーダーの気くばり』(クロスメディア・パブリッシング)

 これまでにいろいろな会社の人事評価制度を、それこそ何百とつくりましたが、「評価」というのは難しく、完全なものというのはないと思っています。ただそこには大原則があります。それは評価する側と評価される側が共通の認識を持っていることです。

 自分はこういうことを期待しているんですよ、というリーダーとしてのメッセージがあり、それを相手が事前に聞いている。つまり、あと出しがないということが非常に重要です。

 ただ、私は、いままで評価制度をたくさんつくってきてはいますが、究極的には評価表で評価しないほうがいいと思っています。

 そんなものはなくても日常的に何かあれば、双方で確認し合う、話をする、このことができれば、そのほうがいいんじゃないかと思っています。評価表より日常のコミュニケーションが大事です。