このほかにも、資料などのレビューのとき、よくない部分があってもこちらでチャチャチャと直さず、手間を惜しまず指摘してあげるとか、なぜよくないと私が思うかについて答えてもらうとか、そういうことを意識してやっていくと部下の成長にもつながると思います。

トラブルの責任を部下に負わせない

 トラブルには、いろいろなものがあると思いますが、一番わかりやすいケースとしては、会社が提供している商品ないしサービスがクライアントの期待に沿えずクレームがもちこまれるケースが多いのではないでしょうか。この場合、仕事を任せたのだからといって、部下にその結果まで任せる、責任を取らせる、と考えるのは間違いでしょう。たしかに仕事は任せましたが、その結果まで任せるというのは、基本的にありません。

 それは会社として本来自分がやるべきことを部下に権限移譲してやってもらっているわけですから、「何かあったら、すべて私が責任を取る」「トラブルが発生したときには、私が前面に出て対応する」ということをあらかじめ部下に伝えておいたほうがいいでしょう。

 先ほど取り上げた私が組織改革アドバイザーをしている自治体の場合も、庁内広報で何かとりあげようとしても、何か言われるんじゃないかと、職員は戦々恐々としています。

 職員にはこう伝えました。

「とりあえず今回みなさんがいいと思ったことは全部やったほうがいい。これは改革推進アドバイザーの柴田から強制されたということでいいじゃないですか。責任のすべては私が取りますから」

 改革は思い切りやらないとその実行がおぼつきません。実行の安心材料として、保険として、最後は自分がいるから何でもやりなさい、ということが非常に効果的です。それが、部下に成長機会を与えたときに、その機会を十分に活用してもらうための気くばりです。

部下のメンタルヘルスに注意を向ける

 その人が持っているオーラというか元気度合いみたいなものがわかることがあります。この人いつもとちょっと違う、というものです。ある人を見て「○○さん、今日は睡眠不足かな」「体調が悪そうだから風邪でもひいているのかな」ということがわかるのです。ただわかっただけ、何もしないのはもったいないので、声をかけるようにしています。