組織・チームを率いる管理職は、「部下を成長させる」という大きな責任を負っています。部下が成長しない組織に未来はなく、部下自身が成長を実感できなければ職場の士気は上がりません。では、上司にできることとは何でしょうか?
今回は、大ベストセラーシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』の累計100万部突破を記念し、著者・安藤広大氏(株式会社識学 代表取締役社長)にご登壇いただいた特別イベント『とにかく仕組み化』サミット(ダイヤモンド社「The Salon」主催)で寄せられた「部下のマネジメント」にまつわる質問への、安藤氏の回答を公開します。(構成/根本隼)

部下のやる気が一発で萎える「絶対に言ってはいけない」NGフレーズとは?Photo:Adobe Stock

部下のやる気を削ぐ「NGフレーズ」

読者からの質問① 私の部下は、能力が高いにもかかわらず、負担の少ない「楽な仕事」にしか取り組んでくれません。より責任の大きい仕事に挑戦してもらうには、どのような働きかけが必要でしょうか?

安藤広大(以下、安藤) 人間のモチベーションが高まるのは、自分の成長を「実感できたとき」です。

 なので、成長した経験がまだない部下に、「この仕事をやれば成長できるよ」という声がけをしても、モチベーションアップの効果はほとんどありません。むしろ、「面倒くさそうな仕事だな」と思われて、部下のやる気が一瞬で萎えてしまいます。

 では、どうすればいいのかというと、はじめは上司が「経験を強制する」しかありません。つまり、部下が自主的に頑張ろうとしないのであれば、「頑張らざるをえない環境」をつくらないといけないんです。

 具体的には、以下の3ステップが必要です。
1)部下たちが競争し合う環境をつくる
2)高めの目標を設定する
3)目標達成のための「権限と責任」を与える

 ここまで上司がおぜん立てすれば、部下は努力してくれますし、努力した結果として必ず成長します。そして、その成長によって、向上心やモチベーションが高まるんです

 そもそも、成長というのは「できなかったことができるようになる」ことです。自分の足りない部分に気づいてもらうために、低すぎも高すぎもしない「チャレンジングな目標」を上司がじょうずに設定してあげましょう。

Q. 部下の仕事につい口出ししてしまいます

読者からの質問② 部下に仕事を任せきることができません。部下に対して「自分なりのやり方で進めていいよ」と言っておきながら、進捗が思わしくないと、つい口出しをしてしまうクセがあります。

 上司の手助けが本人の成長につながらないことは理解しつつも、チームとして最短で成果を出すには仕方がないかなとも思い、バランスをとるのが難しいです。このような場合の、上司として最適な対応は何でしょうか?

安藤 優秀なリーダーの条件は、「時間の感覚を正しく持つ」ことだと私は思っています。つまり、「いま」の利益を優先すべき局面と、「将来」の利益を優先すべき局面を、的確に見極めなければいけません。

 たしかに、短期的な利益を最大化するためには、部下の仕事を奪って自分がやってしまった方がいいでしょう。なぜなら、「部下の経験」と「短期的な利益」はトレードオフの関係にあるからです

 しかし、人間は経験を通じてしか成長できないですし、部下が成長しなければ組織も成長しません。なので、上司ばかりが仕事を主導していると、いつか必ず「部下の成長を優先した組織」に負けるタイミングが訪れます

 部下の経験を犠牲にしてでも、「目先の利益」を上げるべきなのか。それとも「会社の未来」を考えて、部下に経験を積ませたほうがいいのか。

 この視点を意思決定の材料にして、マネジメントしてみてはいかがでしょうか。

(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『とにかく仕組み化』サミットで寄せられた質問への、著者・安藤広大氏の回答です)