なぜ留学生は簡単にだまされてしまうのか?

 荘さんに限った話ではないが、留学生はどうしてやすやすとだまされてしまうのだろうか? さらに不可解なのが、犯人に言われるがままに、自分が拘束されたように見える姿を写真やビデオで自撮りして相手に渡していることだ。

 ただ、今回の被害者である荘凱さんはまだ17歳。社会における十分な経験や理解も持たない子どもだ。彼のような未成年は、そんな未熟な彼らを意図的に狙い、祖国の権威機関をかたる犯人にとっては、くみしやすい相手といえるのかもしれない。

 実は、中国からの海外留学は年々その年齢層が下がってきていることが知られている。2022年の米国移民局の統計によると、同年米国の高校に留学した中国人留学生の数は、10年に比べて98.6倍にも膨れ上がった。同期間中の米国の大学留学者数の伸びは14倍、そして院留学者は1.6倍だったにもかかわらず、である。

 また、英国で18歳以下が学ぶ「寄宿制学校」の協会がまとめた、中国人留学生に関する統計でも、2023年に寄宿制学校で学ぶ、あるいは入学準備を進めている中国人学生967人のうち47%が、それ以前にすでに英国の寄宿制学校に所属していたというデータがある。

 中国の社会構造に対してまだ免疫を持たないティーンエージャーにとって、突然自分を名指しして接触してきた「大使館員」や「中国公安関係者」によるプレッシャーは、並大抵のものではないはずだ。さらに、そこで持ち込まれた話の内容を誰にも相談できないのだから。

 そこから、彼らは「大使館員」や「公安関係者」(時にはインターポールを名乗る犯人もいるらしい。中国語で?)に「捜査への協力」を求められ、やはりさまざまな物言いで言いくるめられた結果、「自撮り」写真を渡してしまうのだという。