「自分は実年齢より老けている」と思う人は死亡・疾病リスクが高い…畿央大の調査よりPhoto:PIXTA

 よく「病は気から」というが、「老いは気から」もまた、真なりらしい。

 近年、自分をイメージしたときに感じる年齢――「主観的年齢」が「暦年齢」より老けている人は、「気持ちが若い」人よりも、死亡・疾病リスクが高いことが知られるようになった。

 そこで奈良県畿央大学理学療法学科の研究グループは、同県広陵町との共同事業である「KAGUYAプロジェクト」の参加者に協力を得て、主観的年齢と要介護状態との関連を調べている。

 調査票では、主観的年齢について「年齢相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上である」の3選択肢を設定。さらに、自分の生活をきちんと管理できる「高次生活機能」や運動習慣の有無、抑うつ気分や自己効力感(物事をやり遂げられるという自信)の有無など、心身の状態を聴取している。このほか、追跡期間中に新たに要介護認定を受けた場合を「老い」の指標とした。

 3年間の追跡調査を終えた2323人を対象に、主観的年齢と各指標との関係を解析したところ、調査を始めた時点で「実際の年齢より上である」と感じている群は、ほかの2群より高次生活機能や自己効力感が有意に低かった。

 しかも、新たに要介護認定を受ける割合が「実際の年齢より若い」と感じている群より、3倍以上も高かったのである。「年齢相応」と感じている群は「実際の年齢より若い」群とほぼ変わらない結果であった。気分の若さは、要介護予防に効くらしい。

 主観的な老いは、多くの場面で「もう若くはない」と思い知る40代に始まる。若い頃と今を比較し「中年の危機」に陥る頃合いだ。

 続く50~60代は「衣食住」の好みや社会的地位の変化を受け入れ、方向転換を模索する時期だ。ここで健康志向の生活パターンや新たな自己研さんに取り組むことは、主観的年齢を若返らせる。

 このほか、「自己肯定感」と「自己効力感」が主観的年齢の若さと強く関連することもわかっている。世間一般の年齢差別や、高齢者に対するネガティブな言動に左右されないことも重要だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)